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とりあえず3周プレイ。怪談(?)+クローズドサークルのサウンドノベル。 スクリーンショットから既にC級の匂いを漂わせていたけどやっぱりC級。 「かまいたちの夜」「弟切草」のように、物語にどっぷり浸かるような面白さはちょっと…。 伏線がたっぷりとあるので、それらが一つずつ紐解かれていく面白さがウリ。 PSPで出来ることもあるし、アドベンチャーが好きなら買っていいかも。 以下システム周り。 一度通った選択肢は色の変化アリ。 ムービースキップは出来るが、既読スキップ、文章スキップは無し。 セーブはスロット一つにつき一つです。 ロード後は、「起床」「夕食後」といった場面の最初から読み直すことになります。 攻略サイトによると、エンディングは28個あるようです。 おまけが何故かいっぱいある。アーカイブス仕様でスクショ付。 -- (ななし) 2009-08-30 10 07 19 ドラゴンナイツグロリアスのセーブデータがあると、学校であった怖い話をプレイした人にとっては、にやりとできるおまけがある。 ただ、おまけはおまけなので、過度な期待はしないように、と付け加えておく。 -- (名無しさん) 2009-09-05 10 23 41 ドラゴンナイツグロリアスのセーブデータがあると、みられるおまけは、2週目以降ではないと見られないので注意。 -- (名無しさん) 2009-09-08 22 25 32 クリアー後のおまけゲームで百物語があるものの 数行で終わるようなものもいくつかあったり、茶化した子供だましな話が多め。 あくまでオマケで期待しないようにするよう。 -- (名無しさん) 2021-04-04 05 25 32
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289713269/685-689 「何よ、これ。」 桐乃が擦れた声で呟く。俺が今まで見たことの無い表情で。 怒りか、悲しみか、そのどちらの感情なのか、その目からは読み取ることができない。 「何の真似よ…これ。」 桐乃が一歩後ろへ後ずさる。ガタンと扉にぶつかる音が響く。 そのままその場に倒れてしまいそうな。 「いや、待て桐乃!誤解だ!これは事故なん―――」 「嘘つかないで!」 ビリビリビリ。桐乃の声が部屋にこだまする。俺の弁解を遮るように。 「バカにしないで!あんた今その黒いのに―――」 そこで、一瞬言い淀む。そして、そのまま下を向き、消え入りそうな声で呟く。 「――黒猫に…キスをしようとしたじゃない。」 ――――っ! 俺はキスをしようとしていたのか?確かに黒猫の唇には惹かれていた。 だが、顔を近づけてはいないはず…いや、分からない。本当に分からない。 頭が真っ白になるとは、正にこのことだろう。 「…ふっ、黒猫も黒猫よ。何、駄目って?バッカみたい」 そう言って口元は笑おうとしているように見えた。だが引き攣った唇は 意図した形を作ることができず、桐乃は顔をさらに埋める。 肩が、震えているような気がした。 「桐乃…」 泣いているのか? 「うるさい!」 桐乃はキッと俺を睨み叫ぶ。 「この変態!!あーあ、あんたら似合いのカップルよ! そのままラブホでもどこでも行けば!?じゃあね!!」 踵を返し、桐乃が部屋を飛び出した。まるで、何かから逃げるように。 「おい!待てよ!!」 慌てて俺は追いかける。追いかけながら考える。あの表情の意味を。 なんでここまで怒るんだ?親友を取られた気がするからか? 「おい!桐乃!!開けろよ!話を聞いてくれ!!」 「うるさい!あっち行け!」 俺は祈るようにドアを叩く。ここで引き下がったら、何かを失う気がした。 何を?分からない。ただ、これまで築き上げてきたもの全てを失う気がした。 だから桐乃、開けてくれ…頼むから開けてくれ… 1時間後、俺は呆然とした状態で自室に帰っていた。結局、そのドアが開かれることはなかった。 情けない話だが、その時の俺は、傍からみて抜け殻そのものだったのだろう。 「…ごめんなさい。」 意外なその一言にハッとして振り向く。見ると黒猫が肩をすぼませ俯いている。 つーか何でおまえが謝るんだよ!確かにこの状況を作ったのはおまえだ。 けど、悪いのはキスをしようとした俺だろうがよ! そう――そう言おうとしたのに、何も…何も喋れないんだよ。言葉が出てこないんだよ。 少し長い沈黙のあと、 「…帰るわね。」 そう一言呟き、黒猫は俺の部屋をあとにした。 ――数日後。 あれから俺は桐乃と一言も会話できていない。今まで何度も喧嘩してきた俺たちだが、 今回はいつもと違うような気がする。あいつは俺と顔を合わす度に、ビクッと体を震わせ視線を外すんだ。 まるで、何かに怯えているように。 「はぁ、どうすりゃいいんだよ。」 俺はため息をつき、天井を仰ぐ。そういえばあれから黒猫とも会っていない。 あいつはあいつで相当落ち込んでるだろうな。普段から毒舌振りまいてはいるが、人一倍責任感の 強いやつだからなぁ。 沙織ならどうするかな。…そうじゃん!なんで今まで気づかなかったんだろう。あいつに相談してみよう! そう思った矢先、 ピリピリピリ 突然メールの着信音が部屋に響いた。誰だ?沙織か?恐る恐る携帯を開く。差出人は…黒猫だった。 「三時に駅前のカフェに来て頂戴」 「あれからあの子とは話をできたかしら?」 手をつけてないホワイトモカを前に、黒猫が切り出した。 「いや、全く。…今回ばかりはホントお手上げだよ。」 「そう…」 そんなやりとりの後、俺たちは黙り込んでしまう。店内には静かなカントリーミュージックが流れていた。 この穏やかな店内を見てると、先日の出来事が嘘のようにさえ感じてしまうな。 「あいつ、おまえを取られるのがよっぽど怖かったんだろうな。」 なんとなしに俺が呟くと、黒猫が驚いたようにこちらを見据え、そして呆れたような口調で言った。 「はぁ…あなたは、本当に何も分かっていないようね。察しが悪いにも程があると言うものだわ」 「ふん。どうせ俺は頭の悪い鈍い男だよ。」 そうは言ったものの、黒猫の言いたいことも少しは分かる気がする。こいつは兄を取られるのが怖いとでも 言いたいのだろう。それも少なからずあるかもしれない。たぶんその両方。兄と親友。その両方がいなくなる。 そんなことを危惧し、あいつは怯えているのだろう。 「…沙織に相談してみるか。」 「そうね。けどその前に―――」 窓の外に目を向けていた黒猫がこちらに向き直る。 「寄ってもらいたいところがあるの。」
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1290468634/731-734 「お兄さん、ご相談があります」 いつもの公園へ呼び出され、いつものように切り出される。 この言葉を聞いた後はいつもロクな事にならない気がするが、このエンジェルボイスに逆らう事など初めから選択肢にない。 「同人誌、というモノについてお聞きしたいのですが……」 なんでも、夏コミで桐乃が同人誌製作に参加してからというもの、時々同人誌の話をするらしい。 桐乃は帰国後モデルの仕事に復帰していない。あやせとしては少しでも共通の話題を増やしたいのだが、あいにく同人知識など皆無だ。 それで同人誌、とりわけ同人誌製作に関して俺に詳しく話を聞きたいらしい。 「ふーむ、同人誌製作に関してねえ……」 とはいえ、俺もそこまで詳しいわけじゃないんだよな。 ここは一つ、俺の知る限りで最もそっち方面に明るい奴の力を借りる事にしよう。 「……一応初めまして、になるのかしら。ハンドルネーム黒猫よ」 「新垣あやせです。よろしくお願いします」 ここは秋葉原某所のカフェ。俺の提案で詳しい奴に直接話を聞こうって事になったのだ。 お互いに桐乃の親友という事で関心があったのか、二人とも意外にすんなり承諾してくれた。 「それで、同人誌製作に関して話を聞きたい……という事で良かったのかしら?」 「はい、その通りです」 「その前にまず、同人活動というものについてだけど――」 最初こそ黒猫のゴスロリファッションに少々気圧されていたあやせだが、今は落ち着きを取り戻し神妙に話を聞いている。 これなら俺の出る幕はなさそうだ。今回は何事もなく終わる、そう思っていたのだが―― 「あ、あなたに桐乃の何が分かるんですか!」 「……だからさっきから話しているじゃない。耳が聞こえないのかしら?」 どうしてこうなった。 初めのうちこそ普通に話していたのだが、話が桐乃の事に及ぶとみるみるうちに険悪に。 黒猫特有の言い回しが、あやせの耳には桐乃の悪口を言っているようにしか聞こえなかったのだろう。 黒猫に悪気がないのは分かっているので、ついつい聞き流していた俺なのだが……失敗した。 「桐乃は、あなたが言うような子じゃありません! それは親友の私が一番よく知っています!」 「……あらそう? その親友について『知らない』事があるから、話を聞きにきたのだとばかり思っていたのだけれど」 ぐ、と言葉に詰まるあやせ。オタク趣味の話題に関しちゃ、あやせの方が分が悪いよな。 この場をセッティングしたのは俺だ。ここは俺が二人の仲を取り持ってやらないと。 「なあ、黒猫」 赤いカラコンをつけた瞳が、ついっと俺の方を向く。 「あやせは、知らないなりに桐乃の趣味に歩み寄ろうとしてくれてるんだ。あまり苛めないでやってくれないか」 お前が桐乃の事を大切に思ってくれているのは、知ってるからさ。 「あと、あやせ」 「……なんですか」 「黒猫はあんな言い方だけど、ほとんど照れ隠しみたいなもんなんだ。悪く思わないでやってくれ」 横の方から「な……っ、そ、そんなワケ……」という声が聞こえた気がするが、無視。 「な? 頼むよ」 「お兄さんが、そう言うんでしたら……」 やれやれ、これで一件落着かな? そう考えていたのに、 「……随分その子に優しいのね?」 気が付けば、黒猫がジト目でこっちを見ていた。 「よく見ればその子、先輩の好みの容姿をしているものね? ……やっぱりそういう事なのかしら?」 おい、話を混ぜっ返すな! そりゃ滅茶苦茶好みだけどさ! 「そういう事じゃ――」 「い、いきなり変な事言わないでください!」 怒りのためか、顔を真っ赤にしていきり立つあやせ。 「こんな変態に好かれても、ぜ、全然嬉しくありません!」 グサリ。俺の心に深々と言葉のナイフが突き刺さった。 あれ? さっきまでフォロー役に回ってたはずなのに、なにこの仕打ち。 黒猫はそんなあやせをチラリと一瞥すると、 「ふぅん……。そうなの」 こちらに意味ありげな視線を送ってきた。 「まぁ、先輩は私が『大好き』だそうだから。私の勘違いだったかしら」 まだそのネタ引っ張るの!? てかこれ以上広めないでください! その言葉を聞いて、一瞬硬直したあやせだったが、 「わ、私だってお兄さんに『大好き』って言われました!」 おい対抗するな! そんなに黒猫を言い負かしたいのか!? 黒猫は頬をひくっと引きつらせ、 「あ……あらそうなの。先輩は誰にでもそういう事を言ってしまうのかしらね?」 笑顔を浮かべながらこちらに話を振る。目が笑ってないぞ。 それを見たあやせは、我が意を得たりとばかりに更なる爆弾を投下する。 「この間なんて、け、『結婚してくれ』と言われましたから!」 そんな大きな声で言うなよ! 周りに聞こえちゃうだろ! 「……ふっ……。もし良かったら、詳しい話を聞かせてもらえないかしら?」 なにやら黒いオーラを纏って、ゆらりとこちらに体を向ける黒猫。と、その両目が驚きに見開かれる。なんだ? 「……どうやら尋問するのにより相応しい人物が来たようだから、任せておきましょうか」 正面に向き直り、紅茶に口をつける黒猫。一体どうしたんだ、と思った矢先―― 「ア、アンタ……!」 背中から、溶岩の煮えたぎるような声が聞こえた。 慌てて振り向くと、そこには怒りのオーラを全開にした我が妹、桐乃。 何故ここに!? 「……そういえば今日は、新作ゲームの発売日だったわね」 そういう事は最初に言ってくれ! 知ってたら秋葉原で待ち合わせなんかしてねえ! 「アンタ……何? 今日は用事があるとか言ってたくせに、こんな所で二股デートってワケ?」 「いや……これはだな……」 なんとか宥めようとするも、口が上手く回らない。 「……これが日頃の行いの成果、というヤツなのかしらね」 「お兄さんはもう少し、普段の自分を見つめ直すべきだと思います」 おいお前らこんな時だけ結託するなよ! さっきまで喧嘩してたじゃねえか! 「日頃の行いと言えば。こないだお兄さんにかけた手錠を外す時、何故か急ににやにやし始めたんです」 「……興味深いわね。手錠を外される瞬間に性的興奮を覚えるのかしら」 後ろの会話が進むたび、目の前の妹の怒りゲージがぎゅんぎゅん上昇していく。 「……それにしても、手錠なんて一体どこで入手したの?」 「はい、それはですね――」 二人はすっかり打ち解けた様子で、会話に花を咲かせている。 対称的にこっちは、今まさに血の雨が降らんとしている所だ。なんだこの天国と地獄。 妹に襟元をギリギリ締め上げられながら、当初の目的だけは果たせそうだ……と現実逃避にも似た思いにとらわれていた。 「そんなに結婚したいなら、地味子のとこの養子にでもなれば良いじゃん!」 「なんでそうなるんだよ!?」 そしてコイツの言ってる意味がさっぱり分からん。
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/783-801 暗闇はやっぱり苦手…いつも、わたしの忘れた記憶を呼び起こさせる……… 『さようなら』とメールした後、それでもわたしは更に、闇を求めて目を閉じた。 「お母さん、わたしね………」 『あやせ、あなたは良い子でしょう、何で言う事が聞けないの? わたしはあなたをそんな子に育てた覚えはありません』 「………でも、わたし」 お母さんの悲しそうな顔、いけない 「ごめんなさい、ごめんなさい。お母さん、ごめんなさい」 お母さんを悲しませたらいけない、いけない 『あやせは本当に良い子ね、お母さんとても嬉しいわ』 おもちゃもいらない、お菓子もいらない、おねだりなんてしないもん 「バイエル、弾ける様になったの」 「先生がね、新垣さんは頑張り屋さんだって褒めてくれたの」 「お父さんがプレゼントしてくれたご本、もう全部読んだよ」 だから 今度、お父さんとお母さん……わたしを動物園に連れて行って…… 「お父さん、お仕事頑張ってください。ちゃんと、わたし、お留守番出来るから」 わがまま言わない……… 絶対、わたし……泣かない…… 『新垣さん、一緒に帰らない?』 「え?」 髪を染めてる女の子、不良だ!仲良くしちゃいけない 『あやせちゃんに一目置いてんだよね、あたしって。あん(た)あやせちゃんに 勝手に親近感抱いてるって言うかさ、ぶっちゃけ迷惑だった?』 …………… 『ほら、あやせ、こうすると美人度上がるっしょ?あやせは黒髪が綺麗だし、スタイル も良いから、絶対に似合うと思ったんだよね、ほんとバッチリ。それにさ、メイクだけじゃなくて、 服もピッタリじゃん。まぁその服あたしのだけどね、にゃはは』 「桐乃さん、有り難う」 『ちょっとぉ、どんだけ他人行儀、あんた?うちら、もう親友でしょ!』 「う、うん……あ、ありがとう、桐乃」 『って何で(驚)?せっかくメイクしたのにさ………。あ~じゃぁさ、ほら、ほら、 やり方教えてあげるから自分でやってみぃ、ね?』 本当に、本当に、ありがとう桐乃 「お母さん、わたし、モデルのお仕事したいの!」 お母さんの悲しそうな顔…… それでも……わたしは 「学業と両立させます。ちゃんと責任感を持って一生懸命に頑張るから。 だからお父さん、お母さん認めてください!」 『やったじゃん!あやせ。まぁこれからはライバルだから、敵同士…だかんね! な~んてね………冗談、冗談、心配いらないって、全部、あたしに任せとけって!』 ライバル……なんて、敵同士なんて絶対にならない、なる筈ないよ、桐乃 でも 『俺は高坂京介------そっちは?』 『あやせ、結婚してくれ』 『------冗談だと分かっててもさ、ほんとごめんな』 「-----いってらっしゃい、お兄さん」 さようなら、お兄さん 『あやせ、、、、これが本当のあたしなの』 「お兄さん、わたし、桐乃よりも可愛くないですか? 桐乃よりもわたし魅力ない、、、ですか? わたしなんかじゃ桐乃よりも…すき…になれないですか?」 『俺が見た中で、あやせのウエディングドレスが一番似合ってたし、一番綺麗だ』 『あんた、、、あたしの気持ち知ってる癖に、、何でこんな酷い事すんの? うちら、ずっと一番の友達だったのに!!絶交した時、京介が仲直りさせてくれた時、 約束したでしょ、それなのに、、、裏切ってさ、あたしの気持ち裏切って!!!』 『あやせちゃん、しっかり、きょうちゃんを捕まえててあげなさい。 わたしね、あやせちゃんなら、きょうちゃんと一緒に幸せになれると思ってるんだ。 きっとね、わたしって、きょうちゃんが黒猫さんとお付き合いした時に、あの時に 応援してしまったから、多分………あの時点で、もう』 『自分の心に言い訳しすぎて、その言い訳に結局、自分自身が説得されちゃった。 誰かを好きって気持ちにも賞味期限があるんだ、きっと。 だから、わたしはずっと勇気がなかった、情けないよね、め! だよ。 だから、あやせちゃんは、こんなお姉ちゃんになっちゃ、ダメだよぉ? だから、あやせちゃんは今の自分の気持ちを、ちゃんと大切にしてあげなさい』 『よし、じゃぁ付き合うか。何か照れくさいな……ってこれじゃダメだ! 俺の馬鹿!、馬鹿!、馬鹿!大切な事を忘れるなんて本当に、情けねぇ。 え?あ~こっちの事だよ、気にするなって。 別に、おまえにSMプレイを強要してるわけじゃねぇって、おい! 彼氏に向かって初めて言う台詞がそれかよ! あ?……い…き』 『なり、、お、おまえ…滅茶苦茶、大胆だな……全然嫌じゃねぇけど。 えっと………………何だっけ?あ、そうだ! 俺ら、付き合うって決めた以上は、俺はずっとおまえの彼氏でいるつもりだからな! でも俺は、自分で言うのもなんだが、ヘタレのシスコンで、致命的に鈍いときてる。 だ、だから自虐プレイじゃないんだって(汗) こんな俺だけどよ、あやせの為にもっと、ちゃんとした立派な彼氏になるから! あやせを必ず幸せにするから、だからさ……何だ…とにかく、これからよろしくな』 『あやせ好き、あやせ愛してる、俺はあやせのものだ』 『ああ、ずっとずっと好きだ、ずっと前から好きだ』 『あやせ、これからはいつでも好きな時に来てくれて良いからさ。 いや違うな、俺がいつでも来て欲しいから渡すよ』 *** *** *** 「はぁはぁ」 俺は息をきらせて、走っていた。 ついさっき、俺が感傷的に、色々な事を追憶していた時に、加奈子から電話があったの だが……… 『京介、ひっさしぶり!じゃーん』 「よぉ、本当に久しぶりだな、元気してたか?」 『京介、誰か男紹介してくれよぉー。加奈子にはいつも超お世話になってんだろお? だから、少なくとも、おまえよりもイケメン限定で!』 「おいおい、いきなり何を言い出してるんだ、おまえ…訳分からん奴だな」 『ばっくれんなよ。ネタはちゃんと上がってるんだっつーの。 しかも、加奈子をダシに使いやがって、おまえらどんだけお盛んなんだョ(笑)』 加奈子は、俺とあやせが付き合った事を最初から知っている。 そして、一番最初に祝福してくれたのも加奈子だった。 こいつは案外(と言うと悪いが)良い奴で、今回の件で分かる通り、あやせとも仲が良いし、 桐乃ともちゃんと今まで通りに付き合ってるらしい。 加奈子が俺の存在をどういう形で捉えてるのかは分からないが…あやせがどれほど 加奈子のお陰で救われたのかは容易に想像出来る。 「へ?」 『おいおい、もうとぼけんなって。しっかし、あやせがねー意外過ぎるつーか、 イヤ、意外なのは京介の方か。イヤ、セクハラマネージャーだからむしろ当然だナ』 どうやら、加奈子の話を聞く限りでは、あやせは親に、今夜は加奈子の家に泊まると 言って嘘をつき、その口裏を加奈子に合わせて欲しいと頼んだ(命令した)らしい。 考えてみれば、あやせはまだ高校生なのだ。門限ってものがある。愚かにも、俺は 桐乃と喧嘩して、妹を家に残し、自分が頭を冷やしに外に出てきた感覚で考えていた。 「……………………まぁーな」 『ったく、頼んだ本人の携帯には繋がらないしよぉー。とにかくちゃんと誤魔化した かんな。京介が伝えとけよ。いちゃつきやがって、幸せを加奈子にもお裾分けしろっ』 「本当にいつも有り難うな。おまえにゃ、マジで感謝してっからよ」 どう考えても、そんな素敵な夜になるとは思えないのだが……加奈子に余計な心配を かけたくはないから、こう言うしかなかった。 何であやせの奴は、俺に『さようなら』とメールした癖に、門限の時間になっても、 帰宅しなかったんだ? あやせの携帯にかけたが、当然繋がらない。 『このままわたしを置き去りにして……………今、わたしを見捨てたら、 本当に、本当に、、わたしは何をするか分かりませんよ、お兄さん』 さっき、部屋であやせが言っていた言葉を思い出す。 俺が勝手に信じていただけで、あやせは本当に、俺に見捨てられたと思っていたのか? とにかく俺は急いで部屋に戻ると、ドアを開けたのだが………… 多少は、期待していた俺の希望は見事に裏切られ、部屋の照明は消えたままで、 辺りはしんと静まりかえっていた。 当然、あやせも、あやせの靴や大きなバックや歯ブラシなんかも……ここにあやせが 実存した事を本質的に証明するものは、何ひとつ残っていなかった。 俺がプレゼントしたチョーカーを除いては……。 あいつは本当に………親にも、加奈子にも嘘をついて何処かに行ってしまった。 俺は無意識に、そのチョーカーをポケットに突っ込むと、部屋を飛び出した。 あやせが行きそうな所を考えながら走り出したのだが全くと言って良いほど 検討がつかなかった。 あやせの知り合いに確認しようにも、そんな人物は誰一人、思い浮かばない。 俺はあやせの事が、性格云々じゃなくて………本当に何も分かってなかった。 分からないなんてレベルじゃない、あいつの事を何も知らなかったんだ。 加奈子に何度も連絡しようかどうか迷ったが、多分それは余計な心配をかけるだけで 何の解決にもならないと直感して辞めた。 あやせが言った通り、刹那的にでも抱いてやれば良かったんだ。 あいつに、ちゃんと捕まえててやるなんて偉そうな事を言って、結局心どころか あいつの身体さえ……掴み損ねて、あやせは消えた。 さっき誘惑してきた時のあやせが思い浮かぶ。 あの目も眩みそうな美貌で、理性さえ麻痺させる媚態に満ちたあやせの顔と あいつと喧嘩した時、他の男の話をして俺を嫉妬で狂わせようとした時の声が 頭の中で共鳴して、どんどん悪い事を、嫌な事を、最悪の事を考えそうになる。 俺はなるべく別の事を考えようとして、結局さっきの追憶の続きをはじめた。 麻奈実が学校を休んだ時、桐乃が突然留学してしまった時、黒猫が俺に 別れを告げて転校してしまった時……… 麻奈実の時は、桐乃に相談したんだった。 桐乃が留学した時は、黒猫が色々気を遣ってくれた。 黒猫が失踪した時は、麻奈実に相談しようとして結局、桐乃に助けられた。 俺はあいつらの為にいつも頑張ってきたつもりだったけど、実はあいつらに いつも助けられていたんだ。 俺は、誰にかけるのかも分からず、ポケットの中の携帯を掴もうとした………… 多分掴んでいれば、また泣き言を言った筈だ、いつもの様に………間違いなく。 でも携帯の代わりに俺が掴んだのは偶然にも、チョーカーだった。 無意識に、あやせが持って行ってしまった手錠の代わりに、右の手首にチョーカーを巻く。 俺は頭の中で何度も反芻する 麻奈実が居なくなった時、麻奈実を信じて自分で行動してたら? 桐乃が留学した時に、桐乃を信じて自分で行動してたら? 黒猫が失踪した時に、黒猫を信じて自分で行動してたら? チョーカーを眺めながら、あやせが握っていてくれた右手を思いっきり握りしめると 微かに温もりを感じる。 あいつは言った 『わたしは………自分から……居なくなったり……しない』 と……。 あやせが消えた今こそ、あいつを信じるんだ。もうあの時とは違う。 あやせの為に、追憶した過去の為にも……今度こそ、絶対に失うわけにはいかない。 それは奇跡や宿命なんて大げさなものではない………とても静かで、優しくて、 暖かい予感みたいなもの、俺があやせを好きになった理由そのものなのだ。 もう二度と戻らない(戻れない)"もしも"が、俺の中で本当に過去のものになった事を その瞬間に実感した。 その事実は俺をとても切なく、悲しい気持ちにさせたが、立ち止まってるつもりは もう無かった。 だから…………俺は静かに歩き出した。 *** *** *** どれくらい時間が経ったのだろう……わたしは目を閉じたまま眠っていた。 『おまえは何もしない、そして俺は必ず戻ってくるから…さ』 『さようなら』と自分でメールした癖に、京介さんの言葉が頭の中を何度も過ぎる そして、その思い出が強烈に、わたしの後ろ髪を引く。 悲しいと吠える癖に、構って貰うと尻尾を振ってしまう、まるで寂しがり屋の犬みたいに。 それが漠然と思い浮かんだ、自分のイメージ。京介さんに手錠をされてエッチな事を された時、チョーカーをプレゼントされた時から、、、あの時も全然嫌じゃなかった。 そして、わたしは………。 わたしがもっと素直で良い子なら、お兄さんは頭を撫でてくれたのかな? 「………ワ…………ン…」とかすれた小さな声を出して苦笑した。 "猫"なら、彼女はきまぐれだったのかな?と何の意味も無く、、ふと考える。 それにやっぱり猫の方が可愛い気がして、ちょっぴり嫉妬………したけど……… 今日一日……彼女と電話で話していた時の京介さんの顔が一番楽しそうだった。 そして、それはわたしが好きな京介さんの顔だった。 わたしは 幼い頃に、飼っていた青い小鳥の事を思い出す。 あの時、桐乃の手を強く掴んだ事を思い出す。 あの時、京介さんの腕を指が食い込むほど握りしめた事を思い出す。 好きという感情が抑えられない、失う事を恐れて自分から壊してしまいそうになる…… 小鳥を籠から出して逃がした様に、 桐乃の趣味を認めて自分の友情を押しつけるのを辞めたように、 だから、今度は、京介さんを自由にしてあげよう………… もう、こんなわたしの事なんて、どんなに嫌らわれて、拒否されて、振られても、 きっとわたしは京介さんに対して、感謝以外の感情は、何も残らないのだから。 だから、なるべく笑って、さよならしよう…わたしの大切な人をこれ以上傷つけない為に。 京介さんとの思い出があれば、沢山泣いても、きっといつかは笑顔になれるから……… でも……突然、眩しい光に照らされる。唖然としていた、わたしを大きな手が引き寄せる。 まるで、光そのものが強い意思を持っていると錯覚をするほど、優しくて、確かな温もりが わたしの身体を、優しく包み込んだ。 「……………やっと捕まえた」とクローゼットのドアの先から声が聞こえた。 『どうして………?』と言おうとしたが、強引に……今までに無いほど…強引に…… 抱き寄せられて、口を塞がれた。 ついさっき決心した事を言おうとしたけど、彼の本気の力で押さえつけられた わたしは何も出来なかった。 お互いの歯が何度かぶつかるほど激しく口唇を押しつけられる、わたしの舌が 何度も貪られる……唾液も、吐息も…わたしの全部が京介さんに吸い取られてしまう。 身体が熱くなって、意識が麻痺してきたわたしは、吸い取られた言葉の事も忘れて、 危うく、自分から京介さんを何度も求めようとしてしまった……。 どれくらいの時間が経ったのか、やっと押さえつけていた手を緩めてくれて、 唇を強引にわたしに押しつけるのも辞めてくれたのだけど(でも唇同士はふれたままで) 腰に手を回されて、半ば強引に京介さんの膝の上に座らされた。 だから京介さんの声は音と言うよりも、触れたままの、唇から振動で伝わる。 「俺はおまえの言いたいことが分かってるつもりだ。でもそれだけはダメだ。 その代わり、おまえがして欲しい事なら、"儀式"でも何でもしてやる! もうカッコつけるのは辞めた……からさ」 あんなに我が侭を言って、いつも困らせて…だからこんな風になる事を………… 期待なんてしてなかった、でも京介さんはわたしを見つけてくれた。 そして、ここまで言ってくれてるのに……こんなに求めてくれてるのに………… "でも"わたしは……。 「最初は、同情で付き合った癖に!本当のわたしの事はずっと、見て無かった癖にっ! さっきだって、わたしを見捨てた癖に!だからもう遅い、、全部、遅いんだから!!!」 まだ足りない、やっぱり足りない………いくら求めても、求めれば、求めるほど カラカラに渇いて、余計に欲しくなって…………際限が無なんてない…………だから そう思った時、そう言おうとした時、わたしの渇いた心を、わたしの頬を雫が濡らした。 京介さんは何も言わず、音も立てず静かに泣いていた。 ただ、わたしに触れたままの唇が微かに震えだして、その震えは段々大きくなって ついには肩まで揺らしながら、号泣した。 男の人がこんな風に、人前で泣くなんて、信じられなかった。 沈黙した嗚咽は、わたしから完全に言葉を奪って、ただ彼を何とかし(てあげ)たい と思う動機と暖かい涙を、わたしに与えた。 同時に、わたしは京介さんのしょんぼりした背中が好きだった記憶が蘇る。 ヘタレでも、情けなくても、シスコンでも……鈍くても、エッチで浮気性でも それでも構わない…だから、わたしは別に、欲くて、求めてただけじゃない……… 不器用で歪な、"まごころ"だけど………あなたに、ずっと、ずっとあげたかった。 *** *** *** 俺は何で泣いてるんだろう?原因も分からず、ただ羞恥心もプライドも無く、 俺はあやせの前で、嗚咽していた。 桐乃の前で何度か泣いた事が微かに頭を過ぎったけれど、もうそれが理由で今のこの涙を 止める事は、どうしても出来なかった。 あやせは何も言わなかった。ずっと黙って、ただ俺の背中をさすってくれていた。 それでも泣きやまない俺に対して、彼女は…………… 「ちゅっ……ぺろ……レロ…むちゅ…ベロ……」 最初はキスされているのかと思ったが……そうじゃなかった。 あやせは、唇を押しつけると舌を出して、俺の頬を、頬に流れた涙の雫を舐めだした。 必死に、何度も、何度も、何度も…………滑稽な筈なのに、俺の胸は熱くなり…… ますます涙が止まらなくなったが、それでもあやせは、俺の頬が全部あやせの唾液に 変わるまで、決して辞めなかった。 俺はやっと「ありがとう」と言い、あやせの髪と頬を横から撫でた。 「京介さん、それ好き…だ、だから、もっと………してっ………く…ださい」 さっきは、桐乃にするみたいに頭を撫でる事をあれほど拒絶したのだが、今回は 何故か、ごく自然にあやせに触れる事が出来たし、彼女の嬉しそうな笑顔を見て…… 俺の変な拘りが、このあやせの笑顔を曇らせてたのかも知れないと反省した。 「俺はあやせとずっと一緒に居たい。もう理屈も理由もないんだ。だから……さ……」 「ねぇ、京介さん、何でわたしがクローゼットの中にいるって分かったんですか?」 「本当に何の理屈も理由もない。ただ居て欲しいと………信じただけだ。 まぁ………鈍い俺だから何度か回り道したし、おまえを随分待たせちゃったけどな」 「わたしを信じてたのに、さっきは何で泣いたの?結局、振られると思って悲しくなった んでしょ?本当に信頼してたら……」 「麻奈実がさ、さっき話してた赤城と付き合う事になりそうなんだ。 そして俺の妹とはちゃんと良い兄貴になるって話してきた。 黒猫とも、ちゃんとある約束している。 俺には本当にあやせしか居なくなった。 だから泣いたのかは分からないけどさ………こんな話って、やっぱ俺って情けないよな」 「そうですね、凄くみっともなくて、情けないから、ほっとけなくなっちゃいました…… ………わたし」 「実際、不安だったのかもな。おまえの言う様に、最初は、あやせが危なっかしくて 心配で付き合う事にした。そして、俺の勝手なイメージでおまえの事を見てた。 さっき、おまえを捜し回って、走り回ったけど、でも俺はあやせの事を何も 知らなかったって痛感させられた。 だからおまえに、見た目だけとか、身体だけでも良いって言われた時に……… 俺は何も言えなくて、ちゃんと反論も出来なくて、あやせを余計に傷つけた。 だからその事については謝るよ。変に誤魔化したり、カッコつけたりして、すまなかった」 「でもさっきは見捨てたわけじゃない、おまえを信じてたつもりだったんだ」 これだけの事を言う為に、本当に、随分遠回りしたが、やっと言えて良かった。 「そんなに、わたしを信じてるなら、わたしのコトがちゃんと分かってるって言うなら、 わたしが今して欲しいコ・ト・…当ててください。当ったら仲直りしましょう、ね?」 ウインクして、魅惑的な顔になったあやせが、挑発する様に俺にクイズを出した。 俺はさっきしたみたいに強引にキスする、もう自分が風邪だった事なんてすっかり 忘れていた。理屈も、理由も、クイズも関係なく……純粋にしたいから、した。 「それもして欲しいコトですけど、一番じゃないから………ハズレですね。 やっぱり……わたし達って相性悪いのかなぁ。残念です…ねぇ、京介さん?」」 こいつがずっと"京介さん"としか呼ばない事に違和感を感じた。 "儀式"なのかとも考えたが、俺に髪を撫でられている、あやせにはもうそんな気配は 微塵も感じられなかった。本当にただ、ただ美しい俺の彼女だった。 「んじゃ、また尻ぶった叩くか……アレはあやせのお気に入りだからな」 やっと余裕が出てきた俺は、何とか冗談を言ったつもりだったのだが…… 「それもして欲しいコトですけど、一番じゃないから………ハズレ」 冗談とも本気とも取れぬ態度に対して、いささか俺の理性は、失われ始めて…… やっぱりあやせの言う様に、俺らが変態なのは、間違いないのかも知れない。 変な性癖に目覚めないか心配した将来の不安は、既にリアルな懸念に変わっていた。 「もう本当に強情ですね、京介さんの、、が、わたしにずぅっと当たってるのにっ! それとも処女厨なのは…………冗談だった事が、実は的を射てましたか? はぁ~でも、良いんです……それでもわたしの気持ちは変わりませんから。 あなたがどんな変態でも、応える自信……わたしにはちゃんとありますからっ!」 こいつが何を言ってるのか皆目検討はつかないが、何か相当ヤバイ匂いがするのは 確実に分かった。 「あ、あのさ、、おまえがもう"儀式"を求めてないのは、何となく分かるんだけど それって結局どういう事だったのか、教えてくれないか? それが分からないと、ちゃんとクイズに答えられないと言うか……」 『…桐…………3つ……の……処女………………』と耳打ちされた。 「ははは……あ、あやせさん、そんなの、おかしいですよ!って言うかさ。 キ○ガイみたいなフリをするのは、もう良いからね!だ、だ、だから本当の事を言おうぜ。 俺ら、ちゃんとした恋人だろ?全く……冗談ばっかり、どっちが変態だよ、もう(戦慄)」 あやせは無言で、さっき隠れていたクローゼットから、最近よく持ち歩いている 大きなバックを取り出すと、おもむろに俺に中身を見せる。 ………メイド服、ブラウンのウッグ、眼鏡があった(様な気がするだけの事にしておく) 「もし、わたしが無理やり儀式実行したら、京介さんは、わたしの事が嫌いになって 逃げ出して、わたしの事を捨てましたか?正直に言ってくださいね? わたし……絶対に、もうどんな些細な嘘も、誤魔化しも、許すつもりないから……」 「一回全力で逃げ出して、それでもおまえがやるって言うなら付き合ってやったと思う。 あやせは困ったちゃんなのは分かってるけど、同情以外の感情があるのは今なら分かる。 ぶっちゃけおまえが、NTRの話しなくなったのは儀式とか言い出してからだもんな。 おまえと別れるくらいなら、おまえが他の男の話をするくらいなら、もう超変態で あやせと一緒に何処までも堕ちるやるさ」 半分は本気で、半分賭けで………俺はそう言った。 さっきみたいに、いくら諭してもダメなんだ、あやせを全部受け入れて、もしこいつが 傷つくなら、俺も一緒に痛みを感じてやる。 俺の彼女が堕天使で、地獄の案内人………だとしても、もう離れるつもりはない。 もう、絶対にあやせを一人にはしないって決めたんだ。 でも同時に、『とても静かで、優しくて、暖かい予感みたいなもの』を今なら 信じられる気がした。 「ふふ、京介さん……良いコ・ト・しましょう?もうしちゃいましょう……ねっ?」 そう言った時のあやせの笑顔は純真で、清純で、純粋でとても気高く感じられて、 本当に天使を見たら、こんな気分になるのかもなと俺は、不思議な感慨に耽った。 どうやら、何とか………賭けには勝てたらしい。 何でこいつは、あんな悪魔の発想する癖に……こんなに可愛く笑えるんだよ、全く。 「本当に、儀式はもう良いのか?」 「儀式ならもう終わりました。魔法ならちゃんと、京介さんにかけられちゃった…から」 こっちだって、ずっと魔法も、あやせ菌にもかかりっぱなしだったんだ。 でもあやせには伝わってなかった。だからこれからは、今からはもう照れは捨てて 全部あやせの望み通りにしてやろう。 誰かに聞かれて見られたら恥ずかしくて、死にたくなる様な事でも平気でやってやるさ。 「そっか…………分かった。で、おまえのお気に入りの手錠はどうする?」 あ~ついに、こいつとするんだなと考えると緊張で声は上ずるし、さっきは別れるか どうかの瀬戸際だったのに、今はあやせが目を潤ませて、頬を高揚させてる姿を見ると、 更に俺に胸や臀部を押しつけてる状況を鑑みると、自然の摂理で当然痛いほど硬くなる。 「もう!お兄さ…(ん)…あっ、京介さんは…本当に、何も分かってないんですねっ!」 そういう事か…全く、、、何でそんなに俺に魅惑の魔法を重ねがけしようとするんだ? 「可良いな、あやせは…良いんだぜ?おまえが癖で言ってしまう"お兄さん"のままでさ。 おまえしか見てないんだから………今更、何ズレた心配してるんだよ、ったく」 「……ご、ごめんなさい……で、でも、でも……………」 「手錠はプレイで使うなら良いけど(もう立派な変態だ)、今は必要ないで良いんだな? 心はちゃんと繋がってる。今は…身体は身体同士で繋がりたい、、、で合ってるか?」 恥ずかしそうに、ぎこちなく、でもしっかりとあやせはコクリと肯いた。 こんな最高に可愛い彼女が相手なんだから、今だけは、俺も全力で"男"にならなきゃな。 俺はキスしながら、あやせをお姫様だっこしてベットに運ぶ。 何でだろう、あやせの裸なら本当に何度も、何度も見た筈だが……… DVD事件の時は、自分で全裸になってたし(長時間クローゼットでそのままだった) あやせの部屋ではいきなり下半身を脱がせたのに、今は服を着たままのあやせを 目の前にしているだけで、今までと比べものにならないくらい興奮して、緊張して 完全硬直しちまった、やっぱ情けねぇ………。 自称"男"改め、単なる童貞小僧に成り下がった俺は、キョトンとした表情で見ていた あやせに 「ふふ、良いですよ…ほら…………ボク………お姉さんとエッチなお勉強しましょう? ほらぁ……こっちにおいで」 と誘われた。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288544881/209-215 放課後にほぼ日課となっているゲーム研究会へ顔を出しをし、黒猫と瀬名ちゃんを眺めて英気を養ってから受験勉強をする為に長居をせずに家路に着いたわけだが。 ウチの目の前に制服姿の見知った女の子が二人居るのを見つけた。 一人はラブリーマイエンジェルことあやせたん、もう一人は年上である俺に敬意を払わない糞ガキこと加奈子で共に妹の"表"の友達だ。 桐乃と遊びに来たのだろうか、目の前を素通りするのも何なので挨拶でもしようと近づくとどうも様子がおかしい事に気がつく。 あやせが加奈子の襟首を掴んで塀に押し付けてるって言うか加奈子の足浮いてね? 「ちょ……あやせ!加奈子の首締まってるじゃねーか!?」 おいおいマジかよJCの絞殺の現場目撃とか有り得なくね?ここ日本だよね?大阪民国でもないぞ!? 「あら、お兄さん。こんにちは」 あやせは俺に気付いたのか加奈子から手を放して俺に笑顔で挨拶をしてくれた。たった今まで同級生の首を締めてたとは思えない豹変っぷりだ。 最近、俺と話すときに警戒する様な顔だけでなく社交辞令なのかも知れないが笑顔も見せてくれる様になったが、今はその笑顔が逆に怖い。 加奈子は本当に首が締まってたのかケホッケホッと苦しそうに咳き込んでいた。 「ちょっと待っててくださいね、今加奈子をしつけてる所ですから」 一瞬にして笑顔から般若の様な表情を浮かべ加奈子に向き直る。 いや、あやせさんそれは躾けるというよりこれからトドメを刺すって顔してますよ! 「ま、待った!それ以上やったら加奈子が死んじまうぞ?」 あやせから加奈子を助ける為に俺は二人の間に割り込んだ。 あやせを加奈子に近づけさせないように両手を広げると、俺の制服の裾を引っ張られる感覚に気付き振り返ると加奈子が涙目で俺の足に縋りついてきた。 俺の事を見下してた加奈子が俺に縋りつくって相当怖かったんだろうな……。 「お兄さんどいてそいつ殺せない」 ちょ、この子今○すとか言ってませんでしたー?あやせさん怖えー、あやせさんマジ怖えーよ。(大変怖かったので2回言いました) 「お、落ち着けってあやせ。加奈子がいくら糞ガキだからって○すのは不味いと思うぜ。もしするにしてもここじゃ近所迷惑だから公園にでも行こうぜ、そこでどうしてこうなったのか俺が聞いてやるからさ。それから加奈子の処遇を考えても良いんじゃないか?」 あやせの形相が親父並に恐ろしかったから、目を若干逸らしながら必死に説得した。 「それもそうですね、ここでやったら桐乃にも迷惑が掛かりますし、分かりました場所を移動しましょう」 俺の説得が功を奏したのか、何とかあやせの凶行を抑えることが出来た。 「な、それじゃ加奈子も一緒に―――」 って、加奈子がちゃっかり逃げようと忍足で数メートルほど離れていた。 「かーな゛ーこー」 そうあやせが加奈子に呼びかけると加奈子はビクッとヘビに睨まれたネズミの様に硬直した。 「逃げたら社会的に抹殺するから、タバコ吸ってたの学校にチクられたいの?」 あやせがそう脅迫すると加奈子は「ひっ」と短い悲鳴を上げて尻餅を付いた。 逃げようとした加奈子も加奈子だが、あやせさんマジ容赦ねえ。俺は加奈子に駆け寄り声をかけた。 「歩けるか?俺も付いて行ってやるから落ち着ける所で話そうぜ」 そう言って俺は加奈子に手を差し伸べそのまま加奈子が逃げないようにこいつの手を引いて公園まで3人で移動した。 まるで小学生みたいな加奈子の手を引いて歩くのは犯罪臭がして気が引けるがあやせに任せたら加奈子の手に痣が付きそうだったから仕方無く俺が引っ張って行った。 近所にある小さくて人があまり居ない公園に着くと、加奈子をベンチに座らせ俺は横にある手すりに腰掛けた。 あやせは加奈子の逃亡を警戒しているのか加奈子の手前に立ち睨みを利かせている。 「で、どうしてあんな事になってたんだ。やっぱりあやせがあんなに怒るって事は桐乃の事なのか?」 とりあえず事経緯を聞き出そうと俺から話を切り出す。 「そ、そうなんです!この子が桐乃のオタク趣味を知って、あろうことかそれをネタに桐乃を強請ろうとしたんですよ!」 「ちがっ、加奈子そこまでしようとは……」 あやせの主張に反論しようとした加奈子だったがあやせにキッと睨まれて口を噤んでしまった。 「あちゃー、加奈子にもバレちゃったのかー」 あやせにバレた時点で加奈子にもバレる日が来るんじゃないかとは思っていたがここまで話がこじれる事になるとは。 「まあまあ、落ち着けってあやせ。大体何があったのかは想像出来るが一応加奈子からも話を聞かせてくれ」 このままだとあやせの一方的な糾弾になりそうだったので、先手を打とうとしたのだが。 加奈子はあやせの殺気に圧されたのか涙を流して俯いている、このままだと話をするのが困難そうだから加奈子を落ち着ける為に俺が一肌脱ぐことにした。 「おい、加奈子。泣くなって俺はお前の味方だ、俺の顔見覚えあるだろ。ほら、マネージャーとしてイベント会場まで一緒に行っただろ」 そう言って俺は加奈子のマネージャー役をやって居た時のように前髪をかき上げて見せた。 顔を上げた加奈子は目を丸くし俺の顔見て「あっ」と声を漏らした。この分だとマネージャー時には俺が桐乃の兄だという事には気づいていかなったみたいだ。 「か、加奈子は……悪くないもん……」 心を許せる味方が出来て安心したのかどうにか加奈子は口を開いてそれだけ呟いた。 「はっ、開き直り?あんたは悪徳政治家かっつーの!。桐乃をあんなに落ち込ませて世の終わりみたいに狼狽させた癖に」 あやせの怒りが有頂天になったのか若干桐乃の口調が移ってるぞ。 「いやいや、いくら加奈子でもそこまで腐ってないしこいつなりの言い分もあるんじゃないか。責めるのはそれを聞いてからでも遅くないだろ」 加奈子をフォローしつつ、何とかあやせを黙らせる。 「桐乃の趣味を知ったら誰だって驚くもんな、俺だって最初は家にあんなのがあっても桐乃の持ち物だとはとても思えなかったしあの趣味に否定的って意味ではあやせも同じだろ?」 「それはそうですけど……でも!桐乃を脅そうとするなんて絶対許せません!」 あやせに桐乃の趣味がバレた時の事を引き合いに出してあやせの同意を得ようとしたんだが、どうも「脅し」という部分がキーワードみたいだ。 「その脅したってどういう事なんだ加奈子?」 「気安く加奈子とか呼ばないでよ。あんたも加奈子に嘘ついてた癖に」 嘘ついたって身分を偽ってマネージャー役やってた事か。 「いや、あれはあやせに頼まれて仕方無く……いや、隠してたのは悪かった。すまん!」 「まあ、自分からバラしてくれたからそれはもう良いけどよー。桐乃もあやせも加奈子にだけ黙ってるって酷くねぇ?こっちだってダチだと思ってつるんでたのによー」 そうか、加奈子は自分にだけ隠し事されてたのに腹を立てて喧嘩になったわけか。 「それで、カッとなってクラスの奴らにバラされたくなかったら金出せよって言っちまったわけよ」 「そっかー、腹がたってつい酷い事言っちゃたってわけか―――ってそれ完全にイジメっ子のそれじゃねーか!恐喝は犯罪だぞ」 女子の仲良しグループのイジメがエゲツないとは聞いてたが、これはひでぇ。 ん?だが待てよ。 「いや、ちょっと待てよ。仮に加奈子がクラスメイトに桐乃の趣味の噂を流しても桐乃が否定すれば誰も信じないんじゃないか?」 確か前にあやせに桐乃の趣味がバレた時もクラスメイトは信じないだろうって言ってたよな。 「もちろんです。桐乃は学校ではそんな素振り全然見せてませんから噂だけで信じろという方が無理です」 だよな。俺も廊下に例の物が落ちてた時は桐乃は真っ先に持ち主候補から除外したしな。 「でも、加奈子は桐乃があの……えっちなゲームを嬉しそうに抱えてる所を隠し撮りしてたんです!」 うわ、それは言い訳不可能だ。エロゲのパッケージって裏は大体イベントCGで埋まってるからなー。 「もちろん、真っ先にその画像が入ったケータイを取り上げて削除したんですけど。この子はSDカードにも保存しているとか言うのでそれを末梢しようとした所でお兄さんに邪魔されたんです」 なるほど、それであやせは加奈子を末梢しようとしてたわけか。 「よし、あやせ。加奈子を締めてもいいぞ。俺が許す」 「ちょ、あんた今さっき加奈子の味方だって言ってよな!?」 おっと、加奈子の所業が余りにも酷かったからつい口が滑ってしまったが、一応俺は加奈子の味方だと言ってしまったんだよな。 「すまんすまん、前言撤回だ。お尻ペンペンくらいで許してやってくれ」 加奈子が何言ってんだこいつって顔をしているが、躾と言ったら尻叩きと相場が決まってるからな。 「そうですね、見える所に跡が残ったら後々面倒ですしね」 うん、そうそう流石あやせさんはよく分かっていらっしゃる。それもイジメっ子の台詞だけどね!? 「く、二人とも覚えてろよー!」 そう加奈子は悪態を付くが観念したのか先程とは違い逃げようとはしなかった。 「桐乃は加奈子に甘いから謝ったらそれで許してくれるかも知れないけど、悪い子にはお仕置きが必要だよね」 そう言って加奈子ににじり寄るあやせさんは何処か恍惚とした表情を浮かべていて、加奈子はビビったのかベンチから立ち上がって壁まで後ずさった。 「加奈子、何で逃げようとするの。悪いのは加奈子の方だって本当は分かってるんだよね?」 「だって、なんかあやせ怒るといつも怖いし……痛ッ!加奈子の髪の毛引っ張らないでよ!」 加奈子の二本に束ねられたお下げの片方をあやせが掴み、自分がベンチに座った膝の上に加奈子をうつ伏せに跪かせ、加奈子は膝枕よりは土下座に近い格好になる。 「はいはい、加奈子ごめんなさいしましょーねー」 「ちっ、ガキ扱いしやがってお尻ペンペンくらいで反省なんかしてやるかよ」 加奈子の奴、この期に及んでまだ悪態をついてやがる。あまりあやせを怒らせるなよどうなっても知らんぞ。 「あれ?何か言ったかなー?」 ほら、あやせさんが般若みたいな顔になってるぞ、お前の頭の位置からは見えないから分からないかも知れないがな。 と、思ってるうちにあやせが左手で加奈子の腰辺りをフォールドしながら唐突に加奈子のスカートをパンツごとずり下ろした。 「なっ」「な、な、何してんだよ!?」 俺と加奈子の声が同音の声を上げた。加奈子の小ぶりだが張りのある柔らかそうな尻が目の前で晒される。てか、もう少しで見えんじゃねーの?赤さん貼った方が良くね? パァーン!と目が覚める様な音がしほぼ同時に加奈子が「い゛」と短い悲鳴をあげる。 あやせが加奈子のパンツを下ろしてから間髪を入れずに1発尻に平手を打ちつけたのだ。 「悪い子にはお仕置きしないとね」 あやせは自分に言い聞かせる様にそう言うが、心なしか顔に恍惚の表情が浮かんでるんですが。 「か、加奈子は悪くないもん……」 おいおい、火に油を注ぐ様な事言うなよ。前から馬鹿だと思ってたが加奈子って命知らずだな。 と思っているとバシン!と言う音と共に加奈子の「アッー!」という悲鳴が聞こえた。 こう言っちゃなんだが仕方ないね。 「ごめんなさい。もうしないから許してくださぃ」 2打目の攻撃は流石に加奈子も堪えたらしい尻が手の形に腫れ上がってやがる、初めから素直に謝ってたら痛い目を見ずに済んだのにな。 「加奈子ォ、ごめんで済んだら警察はいらないんだよ。それに桐乃の受けた心の痛みはこんな物じゃ無かったんだから!」 未だ怒りの収まらないご様子のあやせ様はそう簡単に許してくれるはずもなく。 パンッ!パパパパパンッ!とリズミカルなケツドラム音が響いた。 「痛い!痛い!痛くて死ぬー!」 既に手形が付くほどに腫れていた尻にこのスパンキングを食らっては加奈子も限界みたいだ。そろそろ止めてやらねーとな。 俺は、まだ叩こうと手を振り上げたあやせの手を掴んで止める。 「おっと、そこまでだ。流石にこれ以上やると病院行きになっちまう」 見ると桃の様に白く瑞々しかった加奈子の尻がまるで林檎みたいに赤く腫れ上がっている。生意気な加奈子に灸を据えるのは良いが流石にやり過ぎたな。 「私に触らないでください!通報しますよ!」 いやいや通報されかねないのはどっちかと言うとあやせの方だからね?可哀想に加奈子は余りの痛みで放心状態じゃねーか。 「いやだね、これ以上やると加奈子が死ぬかも知れない。だから変態と罵られようが通報されようがこの手は離さない……!」 思えば、あやせに殴られたり蹴られたりはされたが俺からあやせたんにスキンシップしたのは初めてじゃなかろうか。どうせなら不意に伸ばした手と手が触れ合って「あっ」てな状況が良かったな。 「ずるいですよお兄さん、これじゃ私が悪者みたいじゃないですか。シスコンな上にロリコンだなんて救いようのない変態ですね」 ぐほっ、あやせの罵倒は骨身に沁みるぜ。加奈子はロリかも知れんが、あやせたんが好きな俺ってロリコンだったのか?我ながらショックなんだけど。 「ふぅ、分かりました。もう加奈子をぶったりしないからいい加減手を放してください。いつまでも加奈子のお尻を変態の目に触れさせるわけにも行きませんから」 「うおっとすまん!いや、全然視姦なんかしてないからな。俺はどっちかというとおっぱいのが好きだしな」 俺が慌てて手を離すと、あやせは痛みでぐったりした加奈子のパンツとスカートを元の位置に引き上げた。 ふと、さっきから黙ってる加奈子が心配になって俺はこいつに声をかけた。 「おい、加奈子生きてるかー」 返事が無いただの屍のようだ。 加奈子が気絶しているからか、あやせは不意に独白し始めた。 「私、加奈子に嫉妬してたのかも知れません。桐乃は加奈子がコスプレ大会に出てからこの子を溺愛する様になってて、それなのに加奈子は桐乃を裏切るような事して」 あやせが暴走したのはどうやら加奈子にジェラシーを感じていたかららしい。 「でも、それって加奈子と同じじゃね?あいつも桐乃とあやせだけで秘密を共有してたのを仲間はずれにされたと思って意地悪しようとしたみたいだし。似たもの同士もっと仲良くやれよ」 あやせは加奈子と自分が似ていると言われて驚いた様な顔をしていたが、一瞬思案する表情を見せた後に独白するように呟いた。 「似ている、そうかも知れませんね。加奈子の事を馬鹿な子だと思ってましたけど、私もまだまだ子供だったみたいです」 うんうん、あやせもたまに見せる子供っぽい部分が萌えるんだよな。でも一つ突っ込ませてくれ。 「BA・加奈子って駄洒落かよ!まあ、そういう事だから桐乃と3人で仲良くしてやってくれよ。加奈子も聞いてるんだろ?」 あやせと二人で会話をしていたが、加奈子そろそろ起きてる頃だと思い俺は声を掛けた。あの3人が一緒じゃないとダメだしな。 「ちぃ、バレてたのか。ヒデェよな二人して加奈子のお尻を散々叩いたり視姦してやがってよ」 加奈子はもそもそと起き上がってあやせと俺を睨んで今までの仕打ちに不平を漏らした。 「おい!誰が視姦したってんだよ!?中学生の尻くらいじゃ全然興奮しないっての!」 あやせのは別だけどな!雑誌の水着写真には何回もお世話になりました。本当にありがとうございました。 「なんだとぉてめー。くぅ、ケツが痛くて反撃出来ねぇ」 加奈子は俺に仕返しに拳でも振るうつもりだったのかも知れないが、尻の痛みでそれどころじゃないらしく尻をさすりながら恨めしそうに俺に涙目の視線を向けた。 「そうそう、あやせ。加奈子にごめんなさいしような。いくら加奈子がいけない事をしたとしてもあれはやり過ぎだ」 「そうですね、確かにやり過ぎました。ごめんね加奈子、私どうかしてたみたい。加奈子も私達の大事な親友だもんね、隠し事したり信じてあげられなくてごめんなさい。こんな私だけどまだ友達で居てくれるかな?」 あやせは自らの行いを恥じたのか少し顔を赤らめていたが、素直に加奈子に謝ってくれたみたいだ。 「ちっ、本当はさっきの仕返しに一発ぶってから許そうかと思ったのによ。そんなに良い子ブッた謝罪されちゃ仕方ねーな、許してやんよ」 良かった、加奈子もあやせと仲直りしてくれたみたいだ。あやせが加奈子の首締めてた時はどうなるかと思ったが何とかなって安心したぜ。 「あー、忘れる所だった。加奈子さんよ、お前もうちの妹にごめんなさいしないとな。あいつアレで打たれ弱い所あるからさ、今頃枕濡らして泣いてるかも知れん」 「そりゃーいーけどよ、尻が痛くて歩けないからお前加奈子をおぶってってくんね?」 今回は怪我人って事で大目に見るが。加奈子、お前が俺に要求する時の顔って召使でも見るかのごとき物扱いなのどうにかしろよな。 「あーそうだったな、尻が痛いんだったな。ウチまではおぶってってやるよ。ウチに付いたら湿布でも貼ってやろうか確かリビングに常備されてた気がするし」 そう言って俺は加奈子に背を向け手を後ろに回して片膝を付いた。俺がおぶる体勢を取ると待ってましたと加奈子が俺の背中に体重を預けてくる。 こいつ小さいからかすげぇ軽いな、これなら後で加奈子んちまでおぶって行っても平気かも知れん。 「よし、肩に手を回して落ちない様にしろよ。そうだ、あやせもうち寄ってくか?」 あやせも二人の仲直りを見届けたいだろうと思い声を掛けてみたが。 「あ、私そろそろ門限が近いからご遠慮させてください。それじゃ加奈子また学校でね。お兄さんもさようなら」 あやせは、空の夕焼けと腕時計を見比べ慌てた様子で、家路に急いで行った。公園の時計を見ると既に6時を回っていた。 そういやあやせは結構厳しい家の子なんだよな。俺も加奈子を背負いつつなるべく急いで家に帰った。 「加奈子、尻出せよ」 「えー、自分で脱がせば?このロリコン」 「ちっ、生意気な奴だな。仕方ねー、おいしょっと」 「よーし、んじゃこの辺か?」 「ちょ、いきなりそんな所触るなよ痛ぇっての」 「おっと、すまん。もう少し慎重にやるな。どら、こんな感じか」 「あー、そこそこ。気持ちーー。あー、これ癖になるかも」 俺がリビングで加奈子とお医者さんごっこをしていると、不意にリビングのドアが開かれ誰かが入ってきた。 「ちょ、あんたこんな所で何やってるのよ!!?あれ?加奈子……?あんた人の友達になんて事してくれてんのよ!?この変態!ロリコン!」 誰が入ってきてもこの状況は不味かったのだが、寄りにも寄って今一番遭遇してはいけない人物だった。 「き、桐乃か?ご、誤解だ!いやー、これには深いわけがあってだな……」 「問答無用!」 あべし!慌てて言い訳しようとしたが顔面に桐乃の飛び蹴りが命中し言い訳をキャンセルされた。 数分後、そこには並んで土下座をする二人の姿が在ったと言う……。 終わり
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289713269/347-350 一時間は経ったか。 体も瞼も鉛のように重いくせに、俺は眠れずにいた。 時計の一秒一秒を刻む音が耳障なのは、眠れないときの嫌なパターンだった。 「…ねぇ」 ああ、っくそ、明日普通に出勤日なのに。 「ねぇ、おきてるんでしょ?」 だいたい三日連続で泊り込んだら普通次の日休みじゃね? 「ねぇったら…っこの!」 ッゴッ! 突然後頭部を襲った激しい痛みに俺は飛び上がった。 手元に転がる投げ付けられた物を見て驚愕する。 「てめぇ、殺す気か!?」 信じられるか?この女、ジャ●プを人の頭めがけて投げやがった! リノは悪びれもせず「ふんっ」と鼻を鳴らし、 「あんたがシカトするからでしょ?」 と切り替えしてきた。 「寝てただろうが!」 「嘘!寝息無かった」 「お前さっきまで寝てたんじゃねぇのかよ!」 「だれかさんが興奮して見つめてくるから怖くて寝た振りしてたの」 「誰が興奮だこのマセガキ!」 「見つめてたのは認めるんだ?」 ぐ…痛いところを…。 言葉に詰まると、リノはにんまり笑った。 相変らず、苛立ちを覚える顔だ。 「知るか。明日早いんだ、寝かせろ。」 再びコタツの中に体を埋める俺。クッションを枕代わりに彼女の反対方向を向く。 数秒とおかずリノが話しかけてきた。 「ねぇ、眠れないから面白い話してよ」 …出た。 面倒な女の一番面倒な無茶振り「面白い話してよ」。 彼女ならともかく何故こんな子供相手にそんな気を使わねばならないのか。 無視して寝ようと思うと、背後から再びゴソ、という音がしたので急いで振り向いた。 「…あ」 思ったとおり、リノの手にはジャ●プが握られていた。 …危なかった。 怒りをこめて睨みつけると、ばつが悪そうにジャンプを手放し、作り笑いを浮かべた。 「ね、ねぇ、さっきさ妹がどうとか言ってなった?」 「妹?」 「『お前を見てると妹を思い出す~』的な事言ってたジャン」 聞いてたのか、こいつ。 俺の話なんざまったく聞いてないものだとばかり思っていたからすこし驚いた。 「どんな子だったの?」 うるさいと言って煙に撒こうとするも、リノは執拗に聞いてきた。 この調子だと朝まで粘られそうだったので、仕方なし妹のことを説明した。 物凄い美人で、スタイルが良く、勉強は県下トップで、陸上部のエース…まるで俺が嘘をついてるみたいだ。 「なにそれ、エロゲ?」 「え、エロゲ?」 「…なんでもない続けて」 「続けても何も、中二のころに親父と喧嘩して、それで家を出て行ったきりだ。」 「家出したの?」 「…ああ、多分。よくしんねーけどあいつの大切なもんを親父が捨てたらしい」 ボリボリと頭をかいて、リノとは反対方向に寝返りをした。 リノの続きをせかす声が消えた。が、耳を澄ます気配だけは消えてないように思えた。 「お袋が言うには、いかがわしい物だったんだと」 「なにそれ」 「よくしんねーけど、エロいアニメとかのDVDとか人形とか…チラ見しただけだから良く憶えてねぇ。 でもアレがあいつにとって家を飛び出すほどのお宝だったなんてな、未だに信じらんね」 美人で、優秀で、同年代の誰よりも垢抜けていた妹。 その趣味が同年代の女子からもっとも忌み嫌われる類のものだとは、誰にもいえなかったに違いない。 一体何を間違えてあんなものに手を出したのか想像も付かないが、おそらく、桐乃は―――― 「あたしさ、」 静寂を破って、リノが口を開いた。 「家で居場所無かったんだよね。」 「虐待でもされてのか?」 言ってから、なんて無神経なんだろうと自分を呪った。 リノは気にしたそぶりも見せずに続けた。 「そんなんじゃないんだけどさ、お父さん厳しい人であんまり自由にさせてくれないっていうかさ」 そりゃ、おまえ、高校生でそんな茶髪にしてりゃ目くじらも立てられるだろ…と突っ込もうとしたが、 話の腰を折りそうなので黙っておいた。 「なんか、親の思ったとおり以外のことは全然させてくれないというか、私は人形じゃねー!って思ってさ」 「だから家を出たのか?」 だとすればとんだ自己憐憫だ。明日躊躇無く少年課の窓口に放り込んでやる。 だがリノは首を振った。 「あたしが追い詰められたときにさ、誰も助けてくれなかったんだよね。友達も家族も。お母さんはお父さんの言うことを 聞け、って人だったし、兄貴は幼馴染の彼女に夢中で私になんて興味ないみたいだったし、相談できる友達もいなくてさ、 私って一人ぼっちなのかなって。」 ふふ、と思い出し笑いをするようにリノが笑った。 「したら普通落ち込むじゃん?でもあたし、なんか怒りがふつふつ湧いて来てさ、だったら一人でいきてやらーって」 「それで公園で野宿とか笑えねーぞ。」 「最初のうちは上手く行ってたんだってば。友達の家を泊まり歩きながらバイトして、お金ためて」 「友達頼ってんじゃん」 「だから暫くして住み込みで働かせてくれるお店見つけて、お酒作ってたよ」 「っちょ」 たまらず振り向いてしまった。 仮にも現職の警察官を前に未成年が風営法違反の暴露だと!? 「おまえ、自首してんのか!?」 「別に変な事してたわけじゃないって。そこのママさん凄くいい人だったし。学校も行かせてくれたよ?」 いやすっごくイイ人ってのは未成年雇って酒作らせたりしねぇよ。 っくそ、明日書類に書くことが増えたな…。 「あ、そうだ、働きながら書いてた携帯小説が小説の編集者の目に留まってさ、あたし小説出したんだよね」 「はぁ?小説?」 こんなまとも小説の感想文書けるかもどうか怪しいような奴がか? 「「妹空」ってタイトルなんだけど知らないかなぁ~。けっこう売れたんだよ?」 あぁ~…なんか警察学校にいたころ聞いたような… 「同僚が爆笑しながら読んでたな…」 「はぁ!?爆笑?アレの何処を笑えたっての?!」 「しらねーよ、俺が読んだんじゃねぇんだから…、 てかそんな有名な本出してんならお前いまごろどっかの豪邸に住んでんじゃねーのか?」 「…お金なんてもらってないよ。盗作された。」 今日道端で100円落としちゃった、とでもいうかのように、あっけらかんと言った。 公園でのやり取りから、それが嘘でないことだけは分かった。 「で、一昨日お店も借金残してママが逃げちゃった。」 …無残というか無様な話である。 もしリノの目じりに雫が溜まっていなければ、これだけのことがありながら強かに態度を崩さないこの少女にうすら怖さすら感じるところだった。 必死に溜め込んだものを押し殺そうとしている。多分こいつは、桐乃と凄く似ている。 「さ、こんどはあんたの番。」 「え?」 「あたしにだけ恥かかせる気?」 「恥って、……わかったよ。何が聞きたいんだ?」 「自分で考えろっての…そうだなぁ」 天井をみて考えるそぶりを見せた後、嬉しそうに振り向いた。 「ねぇ、なんで警察官になったの?あんた全然そんな感じしないんだけど」 「うるせぇ…どういう意味だ。」 「なんか迫力が無いって言うか地味って言うか…」 「本当に意味を言った!?」 しかも迫力は兎も角、地味ってなんだ地味って。 これでも少しは気にして同僚に勧められたメンズFU●GE買って勉強をしてるんだぞ!? 「で、どうして?」 「ッチ、」 少し気恥ずかしいので、またリノに背を向けた。 「妹が家を出て行ってから家の雰囲気が悪くなってな、」 「また妹?」 …わるかったな。 それから10分ほど、身の上話をする羽目になった。 親父がしゃべらなくなったこと、お袋がやせたこと。 家に居ることが耐えられなくなり、東京の警察官採用試験を受け、全寮制の警察学校に入ったこと。 親父が予想外に喜び、卒業後に絶対にあったほうが良い、と言って乾燥機能付きの洗濯機を送ってきたことまでベラベラと吐かされた。 喉がカラカラだ。 リノは半ば無関心そうに「ふーん」と言うだけだった。 こんどこそ寝るつもりで俺は瞼を閉じたのだが、そうは行かなかった。 「ねぇ、最後にさ」 妙に神妙な声で、ぽつりぽつりと、リノが言う。 「ん?」 「聞きたいこと、もう一つだけあるんだけど…」 俺は諦めるように溜息を吐き、続きを促した。 どうせ断っても聞いてくるに決まっているからだ。 「あんたさ、――――妹のこと、嫌いなの?」
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308729425/60-79 「兄貴、いる!?」 ノックの一つもなしにドアを開け放たれ、 静謐な空気を木っ端微塵にデストロイされたことに業腹を煮やす暇もなく、 「あたしの部屋に来て!」 「……いきなり何だってんだ?」 「いいから!」 俺は物凄い力で腕を引かれ、半ば引きずられるようにして桐乃の部屋に連行された。 「そこに正座」 指先には座布団。 言われるがままに正座する。 桐乃が定位置のワークチェアに座ると、もはや目線の高低差は如何ともし難く、 眼差しの鋭さはどう好意的に解釈しても実兄に向けるべきそれじゃなかった。 白状する。 俺はビビっていた。 今の状況を喩えるなら、岡っ引きに連行され町奉行の御前に座らされた罪人の図、が正しい。 誰が誰役かは言わずもがな。 「なんで黒いのをフッたの?」 と桐乃はズバリ訊いてきた。 「黒猫から聞いたのか?」 「当たり前じゃん、他の誰から聞けるわけ? てか、話逸らさないでくれる?」 「…………」 この展開を予想していなかった、と言えば嘘になる。 しかしこの場を穏便に乗り切るためのセリフは悲しいほどに準備不足で、 また上手いかわし文句を即興で組み上げられるほど、俺の口先は器用でもなかった。 「なんでだっていいだろ」 「ハァ?何その言い方。 あんた、黒いのにも似たようなコト言ったんだってね。 『理由はうまく説明できないけど、付き合えない』って……バカじゃん?」 「お前にバカ呼ばわりされる謂われはねぇよ。 黒猫はそれで納得してくれたんだから、それでいいじゃねーか」 「よくないっ!」 案の定、桐乃は可愛らしい八重歯を剥いて噛み付いてきた。 「黒いのが納得しても、あたしは納得できない!」 知ったこっちゃねえ、と返せば足蹴を食らうのは自明の理、 「なんでお前が、俺が黒猫をフッた理由を知りたがる?」 「あたしが黒いのの代わりに聞いてあげてるの!」 「そうするよう、あいつに頼まれたのか?」 桐乃は視線を四方に泳がせつつ、 「そっ……それは……別に、そういうわけじゃないケド……。 黒いのだって本当は聞きたかったに決まってるし……。 だっ、第一、有り得なくない? 女の子が一生懸命恋の告白したのに、まともな理由もなくフるとかさぁ?」 あんた人の気持ち考えられないの? バカなの? 死ぬの? 桐乃が繰り出す怒濤の三連撃に、こめかみの血管がピクリと痙攣する。 だがしかし、まぁ待て、俺は誰だ? 桐乃の兄貴だ。その温厚さ菩薩の如しと謳われる好人物だ。 これくらいの暴言笑ってスルーできなくてどうするよ? 「あんた、もしかして超キモイこと考えてない?」 「何だよ、その超キモイことって」 「この前あたしに『彼氏作るな』って言ったから、 自分も『彼女作らない』なんて誓い立ててるんじゃないの?」 「お前こそ勝手な妄想してんじゃねぇよ。 なんで俺がお前に遠慮して、彼女を作るのを諦めなくちゃならねえんだ」 「はぁ!?あんた妹に彼氏出来たらギャーギャー喚くクセに、 自分が彼女作るのは何の問題もないとか思ってるワケ? どんだけ自己中なの?死んだ方がいいよ?」 「お前さっきまで、俺がそういう考え方するのがイヤだって言ってたじゃねえか! 俺にはキモイと蔑まれるか死ぬかの二択しかねえのかよ!」 口論はいつしか怒鳴りあいに発展していたが、 お袋と親父は福引きで当てた日帰り旅行に繰り出し、終日、家には俺と桐乃の二人きり、 仲裁人の登場は期待できそうになく、 携帯も桐乃の部屋に入ってからというもの頑なに沈黙を守っていて、 誰でもいいから連絡してきてくれよ、という祈りは神への道半ばで潰えたらしい。 「……あんた、黒いののことが好きなんじゃなかったの?」 と不意に大人しい声で桐乃が言った。 「あたしがスポーツ留学してた時は、ずっと黒いのこと気にかけてたんでしょ? 黒いのを部活に誘って、一緒にゲーム作って、友達まで作ってあげてさぁ……。 そこまでして、黒いのに惚れさせといて、いざ告白されたら付き合えないって、おかしいじゃん」 こいつめ、ちょっとシリアスな雰囲気を醸せば、 俺がベラベラ本心を話し出すと思っているんじゃないだろうな。 とは言え、ここでつっけんどんな返しが出来るほど、俺は初志貫徹型の人間じゃあなかった。 「なあ、もう一度訊くぞ。 どうしてお前は、俺が黒猫をフッた理由にこだわるんだ?」 桐乃はぎゅっと下唇を噛み、しかし今度は目線を逸らさずに、 「あの子が……黒いのが可哀想だからに決まってんでしょ。 電話では普段通りに喋ってたけど、黒いの、多分泣いてた。 実際に泣き声が聞こえてきたわけじゃないけど、分かったの」 なぜ分かる、とは訊かなかったさ。 訊いたところで、友達だから、と臆面もなく言い返されていただろうからな。 そして桐乃が言うからには、黒猫が泣いていたというのは真実なんだろう。 約束の場所、校舎裏のベンチで、 『謝らないで。これは予言されていた世界の選択。 アカシックレコードに刻まれた絶対の理、確定事象なのだから』 首を横に振った俺に、黒猫はそう言ってくれた。 声には自嘲の響きが含まれていて、表情はなぜか愉しげだった。 が、黒猫が心の裡で本当は何を思っていたのかは……今更、言葉にするまでもねえわな。 「あたし、怒らないから」 桐乃は両手を膝頭の上にのせ、固く握りしめて言った。 「兄貴が黒いのをフッた理由、ちゃんと聞かせて?」 選択肢は三つある。 1.今すぐ無言でこの場から立ち去る 2.強引に煙に巻く 3.自分でもイマイチ整理できていない本心をぶちまける 1番は完全な悪手だ。 桐乃と俺の関係は悪化の一途を辿り、事態解決のために、やがて3番を選択せざるを得なくなる。 2番も妙手とは言い難い。 張りぼての嘘はすぐに見透かされてしまうだろうし、応急処置はしょせん応急処置で、 やがては3番を選択せざるを得なくなる……あれ、このゲーム最初からルート決まってね? 「すぅーはぁー」 と深呼吸をひとつ。なあに、そう気負うな京介。 ぶちまけたところで人生が終わるわけじゃない。 「俺が黒猫をフッた理由は……」 ほら、後の祭りを楽しんでやる気で言っちまえ。 「……お前だ」 「お、お前って……あたしの、こと……?」 ああそうだ。その通りだ。 桐乃、お前以外の誰がいる。 「やっぱり、あたしのせいだったんだ」 桐乃は悄げた様子でそう言い、一転、俺を睨み付けると、 「さっきも言ったと思うケド……。 あたしに彼氏を作らせない代わりに、自分も彼女を作らないとか、 そーいう下らないルールで自分を縛るの、やめてよね。 あたしはあんたに彼女ができようができまいがどうだっていいし、 黒いのとあんたって厨二病と地味顔で相性良いと思うし、 ワケわかんない女に誑かされるよか、黒いのと付き合う方がずっとマシだと思うし……。 とにかく、ホントに余計なお世話だから……だから……」 締めさせねえ。 「余計な世話してるのは、お前の方だっつーの」 「なっ」 桐乃が再び八重歯を剥いたところで、俺は正座を崩し、傍らのベッドに腰掛けた。 普段なら「勝手に座んな!」と激怒されて然るべき行動だが、 お前と目線の高さを同じにするためだ、今くらい許してくれよ。 「俺は黒猫に告白されて、嬉しかったよ。ものすげえ嬉しかった」 後輩の見目麗しい女子から、慕情の丈を告げられる。 そんな、思春期の頃からボンヤリと夢見ていた、青春の理想が叶った瞬間だった。 しかも相手は前々から好意を懐いていた黒猫だ。 正直に言う。天にも昇る心地だったね。 でもな、そんな舞い上がってる状態で、エロゲなら選択肢さえ現れない状況でも、 脳裏にはお前の姿があって、気づけば俺は、黒猫にノーを突き付けていたんだよ。 お前に『彼氏を作るな』と言った手前、俺が彼女を作るわけにはいかない? そんな理屈をこね回している余裕が、あの時の俺にあるわけねーだろ。 俺は徹頭徹尾、直感で動いた。 その結果がコレだ。 「そ、そんなの理由になってない! あたしが頭の中に思い浮かんで、それでいつの間にか黒いのをフってたとか……」 「だから最初に言ったはずだぜ。 理由は上手く説明できない、ってよ。 でもまぁ、あれから俺なりに心を整理して、 もしかしたらこうなんじゃねえかな、って仮説は立ててある」 他人事っぽく言ってるが、こればっかりは自分で自信が持てないのだから仕方ない。 現実的には十秒、体感的にはその数倍の時間が流れ、 「……仮説って?」 と桐乃が言った。 「俺はお前のことが好きなのかもしれない。 妹としてじゃなく、一人の女としてな」 と俺は言った。 言葉は喉元で詰まることなく、滑らかに舌と唇を経由して、部屋の空気を震わせた。 意外と抵抗なくできるモンだな。 実妹への告白もどきも。 達成感にも虚脱感にも似た感覚をしみじみと味わう俺を余所に、桐乃はぶるぶると肩を震わせていた。 実の兄貴から性的な目で見られていることを知ったんだ、感慨もひとしおだろう。 もちろん、悪い意味でだが。 「………っ……」 鼻を啜る音が聞こえた。 俯いた桐乃の目から、ぽつりと透明の雫が落ちる。 ティッシュを取って拭ってやりたいところだが、拒絶されるのは目に見えていた。 むしろ半径五メートル以内の存在を許されている今この状況が奇跡と言える。 マジキモイ、ホンットキモイ、死んで、今すぐ死んでと罵詈雑言を浴びせかけられ、 部屋に存在するありとあらゆる縫いぐるみを投げつけられた挙げ句、 鋭いパンチとキックの猛襲を浴びて這々の体で桐乃の部屋を逃げ出した俺は、 数分後に駆けつけたあやせに半殺しに遭い、 数時間後に駆けつけた両親から離縁状を突き付けられる……ところまで想定していたんだが。 「……いつから?」 自主退室しようとした折だった。 蚊の泣き声レベルの声が聞こえてきたのは。 「いつから、あたしのことが好きだったの?」 「さあてな。 お前をアメリカまで連れ戻しに行った時は、もう好きだったんじゃねえか。 普通いねーだろ、寂しくて死にそうだから帰ってきてくれ、なんて言う兄貴なんてよ」 俺は他にも、桐乃をただの妹としてではなく、一人の女として見ていた記憶を思い出す。 好きなのかもしれない? アホらしい。 今更保険をかけた言い方はよせ。滑稽極まりねえぞ。 俺は桐乃が好きなんだ。愛しているんだよ。 正常な恋愛の先駆けとしての、黒猫からの告白を断っちまうくらいにな。 さて突然ですがここで問題です。 実妹への恋心を自覚し、あまつさえその想いを告げた変態兄貴が、次に取るべき行動は何でしょうか? 「来年の春になったら、俺はこの家を出て行く」 答え。妹から、物理的に距離を置くこと。 「だからあと半年だけ、我慢してくれ。 俺が大学に受かって、親父から一人暮らしの許可を貰うまで――」 「ま、待って!」 桐乃は乱暴に涙の痕を拭いながら、 「一人暮らしするって、どういうこと? そんなの、あたし聞いてない。なんで? 地味子と一緒に受ける大学、家からでも十分通える距離にあるじゃん。 なんでわざわざ家を出てくの?」 おいおい、それをお前が訊くのか? 「一人暮らしすること自体は、結構前から考えてた。 家事とか色々大変だろうけど、将来的には良い経験になるだろうってよ……。 でも、今ちゃんとした理由が出来たんだ。 俺はお前を怖がらせたくないし、怖がられたくもない。 そんな関係が続くくらいなら、潔く実質的な縁を切った方がいいだろ?」 大学生になったら、何か打ち込めるものでも見つけて、お前のことは忘れるさ。 帰省もお前が家を空けてるときにするし、 お前が望むなら、二度とこの家の框を踏まないと約束してやる。 「……じゃん」 「ん、何か言ったか?」 「バカじゃん、って言ったの! あたしの気持ちも知らないで、一人暮らしするとか、 あたしを怖がらせたくないとか、勝手なコトばっか言っちゃってさ」 桐乃はもじもじと内股を擦り合わせながら、 「あんたは自分だけが、本当はいけない感情を持ってて、 そのせいであたしに引かれてる、って思ってるのかもしれないケド……。 ほ、ホントはね……あた……あたしも……」 言葉尻を切り、上目遣いに見つめてくる。 可愛い――じゃなくて、どうしてそこで口を閉じる? 「もうっ、これだからあんたは……最後まで言わなきゃ分かんないワケ?」 馬鹿正直に肯く俺。 このとき俺の脳味噌において、両思いの可能性は完全な埒外にあった。 人の機微に鈍い鋭い以前の問題である。 果たして桐乃は、首筋から顔にかけてを赤く染めながら言った。 その朱色でさえ、俺はセリフを耳にする直前まで、マイナスの感情によるものと信じていた。 「あたしもね、兄貴のことが………………好き、かも」 「は?」 今、現実に耳にできない言葉ランキング堂々の第一位が聞こえた気がしたが。 「ちゃんと聞こえた?」 夢じゃないよな。現実だよな。 誇張表現の一つである『ほっぺをつねる』をリアルに実行し、 鮮烈な痛みに顔をしかめたあと、俺は桐乃が羞恥に身悶えしていることに気が付いた。 タコの縫いぐるみを胸に抱き締め、濡れた目で俺の反応を伺っている。 え、何この可愛い生き物。 「……聞こえた」 ああ、聞こえたとも。 小躍りしたい気持ちを必死で抑え、目頭に熱いものを感じ、 手をやれば熱い雫の感触、俺は自覚がないうちに泣いていた。 ついでにこんなことも尋ねていた。 「いつから?」 奇しくもそれはさっき桐乃にされた質問と同じで、桐乃はクスッと笑いつつ、 「あたしは物心ついたときから、兄貴のことが好きだったよ。 でも、それはあくまで兄妹としての好きで、 兄貴のことを……その……男女的な意味で好きになったのは、 去年、兄貴がお父さんからあたしの趣味を護ってくれたときだと思う」 「全然気づかなかった」 「当たり前じゃん。ずっと、隠してたんだから。 モデルの演技力ナメんなっつーの……なんてね?」 桐乃の言葉に角はない。 甘えるような口調は、もう何年も昔の幼い桐乃を思い出させた。 「何度も兄貴に伝えようと思った。 でも、失敗したときのことを想像したら、怖くてできなかった。 気持ち悪がられたらどうしようって、引かれたらどうしようって……。 ねえ、もしも兄貴が、一年前にあたしに告白されてたら……なんて答えてた?」 「その時はまだ、お前のことは生意気な妹としか見てなかったからな。 多分、普通の兄妹でいよう、って言ってたと思う」 「そっか。じゃあ、我慢して正解だったんだ」 「でもな、もしあの時お前の気持ちを知ったところで、 本気で気持ち悪がったり、引いたりはしなかったと思うぞ。 むしろお前の気持ちに応えてやれない自分が、イヤになったんじゃねえかな」 「ふーん……じゃあ、どっちでも良かったんだね。 兄貴に気持ちを伝えて、だんだん好きになってもらうのも、 兄貴があたしのことを好きになって、気持ちを伝えて来るのを待つのも」 桐乃はしみじみと言い、昔を懐かしむような顔になって、 「あはっ、あたし、都合の良いことばっかり言ってる。 そういうのは、今だからこそ言えることだよね。 あんたのことが好きだって気づいた時は、自分で自分が許せなかった。 報われない恋心なんか持ってても仕方ないじゃん、って自分に言い聞かせてた。 でも、忘れようと思えば思うほど逆効果で、 最近は自分でも、ワケ分かんなくなっちゃってたんだ。 あんたに自分の気持ちを気づいて欲しいって気持ちと、 あんたが黒いのと結ばれたら諦めがつくんじゃないかって気持ちが、ぐちゃぐちゃに入り交じって……」 楽になりたかったの、と桐乃は言った。 「黒いのが告白して、あんたがそれにオーケーして、それで終わり。 あんたがあたしのために黒いのをフるなんて、絶対有り得ないと思ってた」 「けど、これが現実だぜ」 「うん……そだね。ってか、あんたいつまで泣いてんの?」 桐乃は椅子から立ち上がり、ティッシュの箱をとって、俺の隣に腰を下ろした。 「はいコレ」 「ありがとよ」 二、三枚ティッシュを重ねて鼻をかむと、 通りのよくなった鼻孔を、桐乃の匂いがくすぐった。 隣を見れば、ライトブラウンの髪に縁取られた瓜実顔。 胸元を覆うは薄手のTシャツ、ホットパンツから伸びた足は健康的な肉付き。 これまでは極力意識しないようにしてきた桐乃の女としての部分が、 今、抗いがたい魅了の魔法でもって、俺の本能に襲い掛かる。 クソッ、鎮まれ、俺のリヴァイアサンよ。 いくら今が絶好のシチュエーションとはいえ、超えちゃいけない一線ってモンがある。 「ねえ、兄貴」 「な、なんだ」 「これからどうするか、考えてる?」 「どうするって……どうもこうもしねえだろ」 桐乃は頬を膨らませると、 「これまで通りってこと? あたしは兄貴のことが好きで、兄貴もあたしのことが好きなのに、 普通の兄妹のままでいるワケ?」 この子はいったい何を言っているんだろうね。 気持ちが通じ合おうが俺と桐乃が兄妹であることには変わりないだろうが。 誰かに『俺たち(あたしたち)恋人になりました☆』と報告でもするのか? 親父に言ってでもしてみろ、女のお前はともかく、俺はグーで殴られる自信があるぞ。 あやせに至っては、全てを言い終わるまでに息の根を止められている目算が高い。 「みんなには秘密にするに決まってるじゃん。 大抵の人は、兄妹でそんなの、おかしいと思うに決まってるし。 あたしが言ってるのは、そうじゃなくて、 他の人が見てないところでは……こ、恋人みたいに振る舞っても問題ないよね、ってこと」 「ああ」 と肯いてみたはいいものの。 「…………」 恋人みたいな振る舞いが具体的に何を指すのか、互いに想像を巡らせ、沈黙する。 脳裏を過ぎるのは、これまで散々意識してきた、漢字四文字の禁断行為。 俺は無言でベッドから立ち上がった。三十六計逃げるにしかず。 このままなし崩し的に、というエロゲ的展開は何としても避けねばならぬ。 いやマジで。俺の心の準備的にも。 「……どこ行くの?」 掠れた声が、ドアノブに手をかけた俺の後ろ髪を引いた。 「自分の部屋だ」 「ねえ、今日は遅くまで、お父さんもお母さんも帰ってこないよね?」 「ああ」 「じゃあ……」 途切れる言葉。 確実に桐乃は誘惑してきている。 振り返ったが最後、俺は本能に忠実な獣に成り下がるだろう。 心の悪魔が囁いた。 別にいいじゃねえか。何を躊躇う必要がある? 据え膳食わぬはなんとやらだ。ここで逃げれば男が廃るぜ。 俺はゆっくりと振り返り――。 「エロゲーしよっ?」 ――満面の笑顔で、しすしすスペシャルファンディスクを掲げる妹の姿を見た。 「はっ」 溜息が出たね。 が、その溜息の内訳は、安堵九割落胆一割で、いつしか邪な思考は跡形もなく消えていた。 何も急ぐことはないんだ。時間ならたっぷりあるんだからな。 「やるか、エロゲー」 先に予習を済ませておくのも、悪くはないさ。 おしまい! 続くかな~?
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289713269/675-679 ふと時計を見ると3時を少し過ぎたところだった。 さっきから俺達は、とある店の前で順番待ちをしている。 落ち着いた佇まいの外観と、お嬢様然とした内装。そして外にいても微かに匂ってくる甘い香り―――。 忘れるはずもない。前回の偽装デートの時にも行った、あのスイーツショップだ。 別に来る予定は無かったんだが、少しばかり小腹が空いちゃってさ。そん時にたまたま近くにあったから寄ったって訳だぜ。 なにも桐乃が行きたそうにしてたからだとか、そんな理由では断じてない。 まあそんな事はさて置いて、まだ呼ばれるまで時間がかかりそうなので、俺は改めて周囲へと意識を向けてみる。 この前とは少し違い、今日は大勢のカップル達で賑わっている。確かあの時はカップルなんかほとんど居なかったんだが、 何かのイベントでもやってるのだろうか? ともあれ、そんなカップル達は仲睦まじく言葉を交わし、またはお互いにじゃれあったりして、あまーい空気が場に充満している。 もっとも、俺達も傍目には同じように見えているんだろうけどな。へへ。 そんなくすぐったい思いで桐乃を見ると、向こうも俺を見ていて、がっつりと目があった。 「な、なに?」 桐乃の顔が見る間に赤く染まっていく。と、 「もっとこっち来いよ」 「は?」 「いいから」 ぐいっと強引に桐乃の体を引き寄せる。 「あ、あんた…?」 「嫌か?」 「別にそういうんじゃないケド…」 少し俯きながら桐乃が身を寄せてくる。 甘い空気にあてられたのか、それとも何か別の事なのか…。ともかく桐乃の顔を見た瞬間、こうすること以外の選択肢は消えていた。 どうしてだかは自分でも良く分からねーんだ。まるでバカップルみたいだが、それでもいいさ。 むしろ、そう見ろってなもんだぜ。ただし、誰でもって言うわけにはいかないが。 「…ところで今回は大丈夫だろうな?」 「なにが?」 「この前の加奈子みたいに、俺達の事知ってる奴に会っちまわないかって事だよ。あいつはアホだったから良かったけどよ」 これだよ。こんな状況を知り合いに見られるのは非常にまずい。 一応は、この関係ってのは極一握りを除いては秘密のままなのである。 だけど 「あーそれなら平気」 俺の心配をよそに、ひらひらと手を振って桐乃が即答する。 「加奈子以外であんたの事知ってるのなんてあやせとランちんくらいだから。あやせは仕事だし、ランちんは予定があるって 言ってたし、だから大丈夫」 と言う事だった。 なるほど。確かにそれなら「そこら辺」はそんなに警戒する必要もないのかもしれない。 俺の方にしても、桐乃の事を知っているのなんて麻奈実やゲー研の連中以外にゃいないし、こっちも特に問題は無いはずだ。 麻奈実が一人でこんな店にくるとも思えないし、野郎どもならなおさらだしな。 まあ、部長ならラブタッチの「彼女」と一緒に来たりする可能性も無きにしも非ずだが、いくらなんでもさすがに無いだろう。…と信じたい。 「だけどさあ」 だが俺は、それでも一抹の不安を言葉にする。 そこまでの知り合いじゃなくても、学校の奴らや近所の誰かに見られたりしたらどうする? 前回だってそういうのでかなりビビってたよな、お前。 もし誰かに見られて、そっから話が広がって、それでバレたりでもしたら―――。 「別にいいよ」 俺の心をあたかも見抜いたかように制して、桐乃が言った。 「そりゃ見つからないに越した事はないけど、もしバレたらそれはそん時だから。そんなの最初から覚悟してる事だし」 「お前…」 その言葉に胸が熱くなった。 まったく、お前って奴は本当に凄いよ。それに引き換え、いつまでたっても俺は情けねえ。 後悔はしないとか言っておきながら、実のところは俺が一番ビビってたんだ。 くそったれ。本当に馬鹿だよ。いいぜ、今改めて言ってやる。例えこの先どんな――― 「それに、どうせ誰も信じないだろうしね。あんたみたいな地味面があたしの彼氏だなんてさ~。最悪、イザとなったら あんたに無理やり連れてこられたって事にすれば良いしぃ」 おいコラ!俺の感動を返せ! てかそれ言う?普通言わないよね!?今までやったどのエロゲーにだって、こんな場面でそんな落とし方するシーンなかったけど! あーいかん。やる気が一気に無くなってきた。どっかのとある主人公並みに臭い台詞吐こうと思ってた矢先だし、余計にダメージがでかいわ。 「ねえねえ、それよりもさ」 「あん?」 なに?お前まだ俺になんか言ってくんの?いっとくけど今の俺のライフはゼロよ。 「あれ、もう一回見せてよ?」 期待に満ちた桐乃の瞳だった。 はあ…仕方ねえな。 「ほらよ」 渋々手を差し出す俺。何の変哲もない手である。ただ一点、その指先を除いては。 「へへっ。おそろおそろ」 嬉しそうに桐乃が自らの手を重ねてくる。 その指先には、俺のと同じ指輪が光っていた。 ペアリング、というヤツらしい。 ここに来る前に寄ったアクセサリーショップで桐乃が選んだ物だ。 プレゼントしてやるつもりではいたにも関わらず、内心はどんな高い物買わされるかとドキドキだったんだが、 意外にも桐乃が選んだのはそう高くもないこれで随分とホッとしたもんだ。 その代わりにその場ではめる事を強制されたけどね。 はっきり言っておくが、恥ずかしいったらないんだぜ。 普段アクセサリーなんて着けない俺にしてみたら、まずこういうのを着けるって事自体になんか抵抗がある。 しかもいきなりお揃いで、さらにそれを見せっこだしな。恥ずかしいってレベルじゃねえぞ! まあ、だからって別に嫌だって訳じゃねーけどな。 俺と桐乃の関係をこれ以上ないくらいに表してる物だし、恥ずかしいけど嬉しいよ。 それに、さっきから周りの野郎どもが俺達(主に俺)を、驚きと若干の嫉妬が混じった視線で見てくるので、それが少しばかり心地良いしね。 へっ、どうだ。俺の桐乃は可愛いだろ。はっきり言って世界一だぜ。 でも変な目で見たらブッ飛ばすかんね。ペッペッ。 と、なんだかんだで復活してきた俺であったが 「イブの時もピアス買ってもらったけどあれは半分取材だったし、だからこれって初プレゼントじゃん? 超嬉しいし、ずっと大切にするから。その……ありがとね、きょうすけ」 重ねた指を絡ませながら桐乃が呟いた。 一瞬、魂が抜けてしまったかと思った。 今のそれ、お前反則だろ。場所が場所じゃなけりゃ、今すぐに抱きしめてやりたかったよ。 「あ、ほら。あたし達の番じゃない?」 名前を呼ばれたのにも気付かなかった俺を、桐乃が店内へと引っ張って行く。 落とされたり持ち上げられたり、本当にいつもいつもこいつには振り回されてばっかりだ。 でもいいさ。いつまでだって振り回されてやんよ。 * * 「結局食べきれなかったかあ」 「てかありゃ無理だろ」 店を出てプラプラと歩きながら、俺達はさっきの感想を口にする。 頼んだのはカップルセットとかいう、やたら馬鹿でかいパフェとドリンクのセットメニューだった。 どうやらカップルしか頼めないらしく、お陰さまでストローやスプーンが二本刺さってたりして、量以外にも相当な代物だったよ。 実際いろいろとあったんだが……まあ今それを話すのは止めておこう。 「完食したら記念品もらえたのにさ。なんでもっと頑張んなかったの?」 「俺を殺す気かよ」 「今日は仕方ないけど、次、次は完食だかんね?」 「…へいへい」 口の中に残る甘ったるさにウンザリしながら、俺は相槌を打つ。 でもお前、残念がってる割には随分と笑顔じゃんかよ。 相変わらず意味わかんねえけど、それなりに頑張った甲斐もあったのかもな。 「さて」 一つ背伸びをして気持ちを切り替える。 「それじゃあ最終目的地にいくか」 と――― 「…桐乃?お兄さん?」 あ、俺死んだな。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1291723688/719-724,754 それは、またしても加奈子の臨時マネージャーとして駆り出された日の事だった。 「二人ともお疲れさん」 イベントが終了し、控室にブリジットと共に戻ってきた加奈子にタオルを渡しながら声をかける。それほど長時間の出番ではないとはいえ、強い照明の下で歌ったりアニメの再現シーンを演じた二人は、汗びっしょりだったからだ。 「なぁ、今日この後ヒマ?」 礼の一つも言わず(ブリジットはもちろん丁寧にお礼を言ってくれた)加奈子が声をかけてきた。 「ああ、特に用事はないけど」 「ならカラオケ行こうぜ。ちったぁ使えるようになったマネージャーの慰労会を開いてやる。お前の奢りでな」 「俺の慰労会なのに自腹!?意味わかんねぇし!」 そんなやり取りの末、俺達は三人でカラオケに行く事となったわけだ。 加奈子に連れていかれたカラオケボックスは、古びたビルに入っている個人経営とおぼしき店だった。しかし曲の種類も軽食メニューも豊富で、廊下の照明が薄暗い事をのぞけば悪くない感じだった。 受付からほど近い部屋に落ち着き、軽くつまめる物とドリンクを注文すると、早速加奈子がリモコンで曲番号を打ち込みだした。 「景気づけに派手な奴いくぜ!」 それから加奈子とブリジットは入れ代わり立ち代わり歌声を披露した。加奈子が上手いのは知っていたが、ブリジットも負けず劣らず上手いのは意外だった。普段会話している日本語よりよっぽど上手いじゃないか。 二人はひとしきり歌った後、ようやく小休止をとりドリンクで喉を潤していた。 「あの…マネージャーさんは歌わないんですか?」 空になったグラスをテーブルに置きながら、ブリジットが尋ねてきた。 「俺はあんまり歌うの得意じゃないんだ。けどお前らの歌が上手いから、聞いているだけで充分楽しいよ」 そう答えると、ブリジットは安心したように微笑んだ。 「そうですか。今日はマネージャーさんの、い…いろうかい?ですから楽しんで下さいね」 いい子だな~、加奈子の人にたかるための与太話を真にうけて、俺を気遣ってくれるなんて…。感涙にむせんでいると、ブリジットは 「すみません、ちょっとお手洗いに…失礼します」 そう言って出ていった。礼儀正しい子だよな。おまけに可愛いし…年齢が後5つも上だったらやばかったかもしれん。それに引き替えこいつは…。ドリンクを飲み干し氷をバリバリとかみ砕く加奈子を見て、俺はそっとため息をついた。 「あんだよ、人の顔見てため息なんかつきやがって」 目ざとい奴だ。 「別に。それよりお前が飲んでるドリンク、メニューに載ってないな」 やや強引に話題を変えると、加奈子はニヤリと笑っていった。 「ああこれ?これはここの常連だけが知ってる裏メニューwなんならおめーも飲んでみる?」 メニューに乗らない裏メニューか…ちょっと興味ある。考えているうちに加奈子は、人の返事も待たずにそのドリンクを3つ注文した。…3つ? 疑問が顔に出たのか、加奈子はチラッと俺を見た後、ブリジットが座っていた席を顎で指し示した。その前に置かれている、空になっているグラスを見て俺は納得した。なんだかんだでこいつ、ブリジットには優しいよな。 「あいつも出すもん出したら、また喉が渇くだろうしな~」 これでもう少しデリカシーがあればな… 間もなくブリジットが戻ってきたが、なんだか様子がおかしい。首筋まで真っ赤にして、視線も定まらず心ここにあらずといった様子である。 「お~いブリジットー、なんか面白いもんでも見たかー?」 加奈子がニヤニヤしながら尋ねる。どうやら心当たりがあるらしい。 「え…え~と…あの、その……」 加奈子のからかい混じりの問い掛けに、ブリジットはさらに顔を赤くし、しどろもどろになった。そこに、注文したドリンクが届いた。 「ほら、お前の分のドリンクも注文しておいたから、それ飲んで落ち着けよ」 ブリジットはコクンと頷くと、グラスを持ち一息に飲み干した。それに釣られる様に俺も自分のグラスに口をつけた。 「ぶっ!?加奈子、これアルコールじゃねーか!!」 加奈子を睨むと、涼しげな顔して答える。 「ジュースだよジュース。ただしオレンジジュースに少~しだけウォッカが混じってるけどな」 こ…このガキ…。それよりブリジット! 「おいブリジット!それはアルコールだ!」 慌てて振り返った俺の目に写ったのは、空になったグラスを持ったままみるみる顔を赤くさせていくブリジットの姿だった。 「さて…」 加奈子はグラスを置くと、俺の方へにじり寄るとニヤリと笑った。 「ここからはマイクを持ち替えて、本当の慰労会といくか」 そう言うなり俺の股間に手を伸ばしてきた! 「ちょっ!お前何してんだ!やめろって!」 慌てて振り払おうとすると、突然反対側から抱き着かれた。振り返るとブリジットがしだれかかっていた。 「お、おいブリジット!?」 ブリジットを引き剥がそうと悪戦苦闘している間も、加奈子の手はまるでマッサージをするかの様に、やわやわと俺の股間を揉みしだいていく。その手技に反応して、情けなくも漲る俺のリヴァイアサン…。 「やめろとか言いながら、アッという間にギンギンじゃね~かw」 そう言いながら、ジッパーを下げると俺のリヴァイアサンを取り出した。 「おいおい、こいつは随分立派なマイクだな?あたしもこんなデカイの初めて見たぜ」 気がつくとブリジットも、顔を真っ赤にしながら俺の股間を凝視していた。そしてポツリと呟いた。 「前にお風呂で見たパパのは、こんな大きくなかった……」 当たり前だ。親父が実の娘と風呂に入って股間を漲らせていたら、家族会議すっとばして離婚協議に突入だよ! そんな事を考えている間に、加奈子は俺のリバイアサンを弄り続けていた。舌を突き出し裏筋をツーッと舐め上げたかと思うと、亀頭部分だけを口に含むと舌先で尿道口を刺激する。沸き上がる射精感を堪えながら、俺は必死にに加奈子を止めようとした。 「か、加奈子、これ以上まずいからやめろって!店の人に見つかったら…」 「ああそれだったら大丈夫。この店はいわゆる『ご休憩』もできるカラオケボックスとして有名なんだ」 「は!?」 「おいブリジット、トイレ行った時に通ってきたほかの部屋の様子教えてやれよ」 加奈子に言われ、ブリジットはモジモジしながら語りだした。 「え、え~と…その、他のお客さんが入ってる部屋から…あの、男の人と女の人が……している声が…………」 ブリジットは恥ずかしさから段々と声が小さくなり、顔を伏せ最後は聞き取れないほどになってしまった。 「まぁそういうこった。納得したところでさっさと続けようか」 言うなり加奈子は俺のリヴァイアサンをすっぽりくわえ込むと、口唇奉仕を再開した。 加奈子の口内は生暖かく、そして柔らかだった。さらに俺の様子を窺いながら、感じるポイントを探ってくる。そうして頭を上下させながら棹に舌を絡めてくる。 「か、加奈子…まずい。限界だ…!」 込み上げる射精感を必死に堪えながら、加奈子の口からリヴァイアサンを抜こうとあがく。 しかし加奈子は、早く射精しろと言わんばかりに頭の上下動を激しくする。さらに玉袋をやわやわと刺激し追い込みにかかる。 俺の快感を堪える呻き声と、ジュボジュボという口唇奉仕の音が部屋に響き渡る。 「マネージャーさん、かなかなちゃんのお口…気持ちいいんですか?」 不意に耳元で囁かれた。振り返ると、間近にブリジットの潤んだ瞳があった。 「私の口でも気持ちよくなって下さい」 そう言うなりブリジットは俺の口に唇を押し付けてきた。 「!?」 「ん…」 ブリジットの舌が俺の口をこじ開け、唾液を流し込んでくる。あまりの予想外の出来事に腰に入れていた力が一瞬抜ける。 (ヤバイ!) 慌てて力を入れ直そうとしたが間に合わず俺のリヴァイアサンは、精液を加奈子の口内に思う存分吐き出していた……。 「おめー、出すなら出すって一言言えよ!喉に入ってむせちまったじゃねーか!」 けほけほ言いながら加奈子が抗議してきた。 「すまない、つい気持ち良すぎて…って、一体これはどういう事だよ!ブリジットまで巻き込んで!」 「かなかなちゃんを怒らないで下さい。これは私がお願いしたんです」 「ええっ!?」 ブリジットの説明はこうだった。 何度も世話になったマネージャー(俺の事ね)にお礼がしたい。けれど男の人が喜ぶ事がわからないので加奈子に相談した所、今回の慰労会をお膳立てしてくれた…というわけだ。 「じゃあ、さっきのやたらハイレベルなキスも…」 「はい…かなかなちゃんが、マネージャーさんはHENTAIだから、キスしながら唾液を飲ませたら喜んでイッちゃうって教えてくれたから…」 加奈子、俺をどんな目で見てんだよ! 「事実だろうが~、ブリジットにディープキスされてドバドバ射精したのは」 加奈子は、俺に睨まれてもニヤニヤしながら切り返してきた。 「あの…今度は私がお口で…しますね?」 気がつくとブリジットが俺の足の間にチョコンと座り込んでいた。 コンドハワタシガ? いやいやいやいやいやいや!まずいでしょさすがに!十歳の娘にフェラさせるとか有り得ないって! いくら俺だってそこまで鬼畜じゃないよ!? でも………自分の足の間でブロンドの頭が小刻みに動き、それに合わせてポニーテールが揺れてる光景って最高だよね! 終 調子に乗って慰労会アフター投下 別に 742、 743、 744に期待されたからじゃないんだから! 「ん……あはぁっ…」 椅子に座った俺の膝の上でブリジットが悶えている。俺と同じ向きに座っているので、悶えるたびにポニーテールに結わえられたブロンドの髪が揺れ鼻先をくすぐる。 俺のガチガチになったリヴァイアサンに、ブリジットは無毛の秘裂を押し付け腰を前後に動かし快感を貪っている。その姿は十歳とは思えぬ程淫らである。 あの慰労会以来、ブリジットは俺に異常な程懐いていた。いや懐いたというより性欲の虜になったといった方が正解か。事ある毎に『慰労会』を開きだがる。 今日も、近く行われるイベントのシナリオが届いたから読み合わせがしたいというので、ブリジットの部屋を訪ねたら30分もしない内にこの有様となった。 俺の上から聞こえる快楽に染まった声に誘われ、両脇から手を差し入れると、ブリジットのささやかな曲線を描く胸をやわやわと揉みしだいた。 「ひぅっ!お乳触っちゃダメェ~。今触られたら気持ち良すぎて…おかしくなります…」 そう言いながらも、腰を動かす事を止めない。秘裂から溢れる淫水で、俺のリヴァイアサンはヌルヌルである。 今度は手の平を胸元で円を書く様に回して見る。既に固くしこっている乳首は、俺の手の平の動きに合わせ向きを変える。 「あぅん!ダメって言ったのにぃ……」 ブリジットは振り返り、目に涙を貯め恨みがましい瞳で俺を見つめる。そんな仕草もドキッとする程艶っぽい。思わず興奮を押さえ切れず秘裂に手を伸ばす。 「イィィィィィっ!!」 まるでスタンガンで打たれかの様に全身をガクガクさせると、がくんと力が抜け背中を俺に預けて来た。荒い呼吸をしながら時折ビクンと身体を震わせる様子に、俺のリヴァイアサンも限界までガチガチになっていた。 どうしようこれ…。帰りに加奈子頼んで抜いてもらおうか…。 結局、俺のリヴァイアサンはブリジットが処理してくれた。 「私のえ…えっちなお汁で汚したんだから、私がキレイにします」 なんてカワイイ事を言ってフェラを始めた。 しかし…ブリジットのつたないながら、一生懸命さが伝わってくるおしゃぶりを堪能しながら俺は考える。 まだ十歳の娘を性的に手なずけて、世間から見たら俺は救いようのない犯罪者だろうな。でも…世間から後ろ指指されようが、俺もブリジットも今幸せなんだ。ならそれでいいじゃねーか。 ブリジットがリヴァイアサンから口を離し、上目づかいに聞いてくる。 「私のお口、キモチいいですか?」 「ああ、気持ちいいよブリジット」 今度こそ終
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303394673/621-627 「高坂! 合コン行こうぜ!」 俺の親友である赤城浩平から突拍子もない誘いがあったのは昨日のことである。 受験生の分際で、同じく受験生である俺を合コンに誘うとはどういう了見だよ。 もっとも、受験での息抜きが必要だと俺は思っていたので、渡りに船とばかりに 赤城の誘いを受け入れた。 一応言っておくが、『赤城の誘いを受け入れた』という部分だけを抜き出すのは 厳禁だからな! そして翌日。 俺は合コン会場で赤城からとんでもねえことを言われた。 「相手は何と女子大生!」 「はぁ?」 「そして俺たちも大学生!」 「今、何と?」 赤城のヤツ、俺たちを大学生と言うことにして、女子大生との合コンを セットしたらしい。 「お前、そうだと知っていたら―――」 「来なかっただろ? だから今教えた」 「お前がこんな策士だったとは意外だぜ。褒めて遣わす」 「有り難き幸せ」 「うっせ。ところで大学生同士の合コンってコトは酒が出るのか?」 「あー、それはない。今日の店は酒が出ねえから」 こうなったら腹を括るか。受験の息抜きってコトでな。 俺と赤城のほかヤロー三人の合計五人が合コン会場の店に入って暫くすると、 少しばかり目立つ感じの女子大生五人組がやってきた。 「初めまして~♪ ヨロシクお願いしま~す」 目立つ感じだけあって、綺麗で垢抜けた感じの女(ひと)揃いだ。 それにしても赤城のヤツ、一体ドコで知り合ったんだよ? ん‥‥‥? 端に居るあの女、帽子を目深に被ってロクに顔も見えねえ。 ははーん。さては人数合わせのために、強制連行されてきたんだな。 俺も似たような状態だから文句も言えんが。 そんな俺の怪訝な視線を感じ取ったのか、女子大生の一人が話し出す。 「ごめんなさい。この娘、合コン慣れしてないから、恥ずかしがっているんです」 やはりそうか。ご愁傷様。 「ホラ! 帽子取って!!」 端から二番目に座っている娘がその娘の帽子を奪い取ると、 帽子の下に隠されていた長い黒髪と清楚な表情が晒された。 ―――おお、あやせ、あなたは何故あやせなのか? さてココで俺の脳内に、エロゲばりの選択肢が現れた。 1.『あれ? あやせじゃないか!?』 2.『すっげー可愛い!』 3.『初めまして。俺は高坂京介』 1を選んだら、合コンで男女が知り合いだったなんて雰囲気悪くなるだろう。 サークルクラッシャーなんて誹りを受けた俺にとって、合コンクラッシャーの 称号が追加されるのは何としても避けたい。 2を選んだらどうなるか? 俺はあやせを知らないと言う前提でのセリフだが、 この状況であやせが俺の意図を酌み取ってくれる保証はない。 そのケースにおいて『通報しますよ!』と言う展開が恐ろしい。 結局、3を選ぶしかあるまい。これならあやせだって、 『俺とあやせはこの合コンで初めて合った』という芝居を俺がしているコトに 気付くはずだ。 「初めまして。俺は高坂京介」 「は、初めまして。新垣あやせと申します」 よし。選択肢は正解のようだ。 挨拶もそこそこに、合コンは早くもツーショットコースに突入した。 その途端、あやせは速攻で俺の隣にポジションをキープして来やがった。 「こ、高坂さん? ココ、いいですか?」 「あ、ああ、もちろんだ」 お互いに作り笑いしながらの会話が痛々しい。そしてヒソヒソ話が始まった。 「(お兄さん? どういうつもりですか? 大学生だなんて!)」 「(お前こそ、女子大生ってどういうことだ? 何歳誤魔化しているんだよ!)」 「(わ、わたしは人数合わせでモデル仲間の娘に無理矢理誘われたんです!)」 「(ちょっと待て! モデル仲間だと? あの娘たち、幾つなんだよ?)」 「(わたし以外はみんな高3です)」 「(げ、マジ!? 俺たちと同い年かよ)」 「(皆さんも高3なんですか!?)」 はぁ‥‥‥。お互い、騙し騙されとはな。呆れてモノも言えねえ。 俺たちも甘く見られたもんだな、と思いつつ、赤城の方を見ると 「オイ、高坂。新垣さんといい雰囲気じゃないか。上手くやれよ」 などと暢気な様子。シアワセな赤城が羨ましいぜ。 そんな赤城が入れた茶々の言葉に、あやせの顔は真っ赤になった。 それから合コンは、お調子者赤城の奮闘により、盛り上がって幕を下ろした。 そしてツーショットコースで成立したカップル同士で、自由行動となった。 当然、俺は‥‥‥あやせと自由行動という運びに。ああ、怖ええええ! 「まったくもう! 信じられません!!」 俺との自由行動の中、ウソを吐かれるのが大っ嫌いなあやせは甚くご立腹である。 「大学生だなんて、わたしを騙そうなんて!」 「騙すって‥‥‥! そもそも騙せてないし、騙せるわけ無いだろ」 「言い訳なんて聞きたくありません」 「お前だって、女子大生だと騙そうとしていたじゃないか」 「あれは! あれは‥‥‥。もう知りません!!」 あやせは、消え入りそうな声での反論もそこそこに、俺を放って駆け出した。 おい、待てよ! の俺の呼びかけを無視したあやせは人混みに消えた。 相変わらず聞く耳を持たない女だな。もう放っておくか、とも思ったが、 今回の責任の一端はウソで塗り固められた合コンをセットした赤城の片棒を 担いだ俺にもあるわけで、あやせをこのままにしてなんかおけない。 人混みをかき分けていくと、何やらチャラい様子の男に話し掛けられている あやせがいた。 「どうしたんだ、あやせ?」 「あ、彼氏サンが居たんだね。ゴメンね!」 チャラい様子の男はそう言うと、人混みに消えていった。 「何だか、おかしな人に声を掛けられました」 「この辺には怪しげなスカウト紛いのヤツがいるらしいからな。気をつけろよ」 「はい‥‥‥ありがとうございます」 「礼なんて要らない。そもそもこんなことになったのは俺にも責任の一端が」 「当然じゃないですか! 全部、お兄さんのせいです!!」 あれえ? このシチュエーションでは感謝のキスじゃないのかよ? 堅すぎるガードはいけませんよ? あやせさん。 「罰として、これからわたしに付き合って貰います。まずはあのお店です」 げ。桐乃と同じパターンじゃねえか。荷物持ちか? 何か強請られるのか? どっちにしろ最悪だぜ。 そんなあやせに引っ張り込まれた店―――コスメショップはヤローが入るのは 小っ恥ずかしい場所である。店内を見回すと当然若い女性ばかり。 俺はもう、溶けて無くなってしまいたい気分だ。 「なああやせ、何でこの店なんだよ? 男の俺にはキツ過ぎるぞ」 「特に理由はありません。罰ですからね」 何だよそれ? 理由も無しに引っ張り回すのかよ? 桐乃並みだな。 居たたまれなくなった俺が落ち着きも無くキョロキョロしていると、 店内に貼られているポスターに目が留まった。 そこは見慣れた、そして今、俺と一緒に居る黒髪の美少女が写っていた。 「あやせ、あのポスター‥‥‥」 「見られちゃいましたね。わたし、キャンペーンガールのお仕事を頂いたんです」 「すげえじゃないか」 「ありがとうございます」 『ねえ、あの娘、あやせちゃんじゃない!? あのポスターの!』 『ウッソ!? マジ?』 そんなヒソヒソ声が店内のあちこちから聞こえ始めた。 「お兄さん! 逃げましょう!」 「え? ちょ、」 あやせは俺の手を取って走り出すと、手を取られた俺も一緒に走り出した。 女の子、それもこんな美少女と手を繋いで街中を走るなんて、 俺の人生のキャッシュには収録されてないもんな。 そんな得難い経験をしつつ暫く走った俺達は、建物の壁に背中をもたれて 息を切らせていた。 「まるで映画のワンシーンみたいですね、お兄さん」 「そ、そうだな‥‥‥」 俺のキャッシュを漁っても、エロゲのワンシーンしか出ないのが情けなかった。 ‥‥‥‥‥‥ 俺は今、あやせの家の前に居る。俺にとっては伏魔殿と言うべき場所である。 何しろ、行く度に手錠かけられるわ、階段から落ちるわでロクなことがない。 本当なら来たくもなかったのが、あやせを独りで家に帰すのも気が引けたので、 男の責任としてあやせを送ってきたわけだ。 「お兄さん、送っていただいて、ありがとうございます」 「ああ、今日は済まなかったな」 「ホントですよ! もうあんなウソに荷担しないでくださいね」 「わかったよ」 「それと‥‥‥今日は助けてくれてありがとうございます」 なんだ。やっぱり感謝してくれていたんだ。安心したぜ。 「お兄さん、目を閉じてください」 「え?」 「お願いですから‥‥‥目を閉じてください」 キタ―――――ッ!! 俺の頭の中には『(俺+あやせ)×感謝=キス』の公式が浮かんでいた。 目を閉じて、内心ニヤニヤ顔面デレデレな様子であやせのキスを待っていると、 「えいっ♪」 ムニュ 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」 あやせは俺の両頬を左右に引っ張った。やりやがったな、このアマ。 チキショー! 騙されたぜ。 「キスすると思ったんじゃありませんか? 変態ですね」 「あのなあ、この状況ならドラマでも漫画でもアニメでもラノベでもエロゲでも キスする場面だろうが! 騙しやがって!!」 「きゃ、大声出さないでください。通報しますよ!」 お前、前世は頭にドクロの髪飾りでも着けた悪魔だったろ! などと伏魔殿の前で伏魔殿の住人に言えるはずもなく、俺は言葉を飲み込んだ。 そんな俺に対して、伏魔殿の住人の口から吐いて出た言葉は、 「もう一度目を閉じてください」 「何で!?」 「お兄さんの変態属性を診断するためです!」 「変態属性って、お前!」 「いいから目を閉じてください。さもないと防犯ブザー鳴らしますよ」 「わかったよ。もうどうにでもしろよ! ハイハイ、目を閉じましたよ!」 チュ 俺の唇に何やら温かく柔らかいモノが触れた。え‥‥‥。 目を開くと、あやせの清楚な顔が俺の目に大写しになっていた。 ええええええ‥‥‥‥!! 狼狽する様子の俺を余所に、あやせははにかみながら言葉を紡いだ。 「本当‥‥‥お兄さんったら、すぐに騙されるんですね。ちょろ過ぎですよ」 「お、お前、今、何を!?」 酷く混乱し、酷く狼狽する俺とは対照的に冷静な様子のあやせは、 清楚な表情を赤らめながら、俺に問いかける。 「わたしの口が何をしたかを、わたしの口から言わせるんですか?」 つまり、“口づけ” “接吻” “チュー” 要するに “キス”をしたってこと!? マジ? マジ?? マジ??? 俺、何時フラグをあやせに立てていたわけ? 「お兄さん。今日はありがとうございました。それでは失礼します」 そう言い残すとあやせは、伏魔殿に向かって歩み始めた。 取り残された俺は、ある想いに耽っていた。 『ブチ殺します』 この言葉から始まったあやせに対する俺の恐怖心。 その恐怖心は顔面ハイキック、手錠、ライターで補強されていった。 だが‥‥‥もしかするとあやせは、俺を騙し続けているのだろうか。 そして俺は騙され続けているのかも知れない。 そして俺は、伏魔殿の中に消えて行くあやせの後ろ姿に向かって言ってやった。 大ウソ吐きのあやせさん。 あなたの口から、いつか必ず本当のことを言わせて見せます。 ってな。 『騙し・騙され・騙しあい』 【了】